75「炎VS炎です」②
ふたりの炎は高密度に圧縮されたレーザーのような炎だった。
紅色をした炎だが、わずかに色に差があった。
ウルの炎は鮮血のような紅に対し、グリムレンの炎は暗めな紅だった。
「――はははははははっ! なんだっ、なんだこれっ! いいぞ! いいぞ、お前! もっと強くできるだろう! 私は出力を上げるぞ! ほらっ、ほらっ、ほらっ!」
「人の身でありながら凄まじい魔力ね。――でも、練りが甘いわ」
炎と炎がせめぎ合い、火花が散る。
火花ひとつひとつが高温を持ち、高火力の魔法のような威力があった。
火花は大地を焼き、穴を開ける。
炎の余波で火花だけではなく、熱も波のように何度も生まれた。
ウルとグリムレンの衣服を、肌を、髪を、熱波が焼いていくがふたりとも気にしない。
ウルもグリムレンもただ炎を撃っただけ。それだけのことでありながら、凄まじい威力を持っていた。
「初めてだ、初めてだぞ、紅のグリムレン! お前の名前は覚えた! 私のこの炎に耐えたのは、お前で三人目だ!」
「意外と多いじゃない」
ちなみに、耐えたのはサムと綾音だった。
だが、まだ、ウルは全力ではない。
手を抜いているわけではない。ウルはそんな愚かなことをしない。
ただ、様子を見ただけだ。
これは、大きな違いだ。
ウルは、できることなら四人の神をすべて単独で殺そうと考えていた。
しかし、この場に降りてきた神々は残念だが、規格外とされるウルであっても「難しい」と判断するだけの強さを持っていた。
「殺せる」と判断していたら有無を言わさずこの地形を変えても、全員を焼き殺そうとしたが広範囲の攻撃では全員を殺せないと判断した。
ならば各個撃破だ。
幸いなことに、世界の意思によって神々は大きく疲弊している。
もとがどのくらいの力を持っているのか不明だが、今の彼らならば――一対一なら負ける気がしなかった。
同時に、ウルは悪癖を出してしまっていた。
戦いを楽しんでしまっているのだ。
世界の命運を賭けている戦いではあるが、神と戦えることなど今回が最後かもしれない。
ならば、神との戦いを味わい尽くしたい。
そう願ってしまった。
普段から力を押さえてフラストレーションが溜まっているウルだからこそ、神々を相手にそんなことを考えてしまったのだ。
「私が本気だと思ったら、勘違いよ。小娘……いいえ、ウルリーケ」
「はっ、神に名前を呼んでもらえて光栄だな!」
「私は戦神ディーオドール様の願いを叶えるためにこの世界に来たけれどね、それ以上に私が退屈だったのよ! 人であり魔女であった頃は、命を狙われて戦いばかりの日々だったわ! うんざりしていたけれど、神々の日々に比べたら楽しかったもの。いいことを教えてあげる。――神ってつまらないのよ」
紅のグリムレンが笑う。
肌を焼きながら、笑う。
楽しそうに、瞳を輝かせて笑う。
ウルにも覚えがある。
退屈は心を殺す。
一度でもつまらないと思ってしまえば、世界は色褪せる。
「なら楽しく殺し合おうぜ!」
「言われるまでもないわ!」
ふたりは炎をかき消した。
しんっ、と静寂が訪れた。
空気が息をするだけで肺を焼くほど熱い。
ウルとグリムレンは同時に、魔法を放った。
「――すべてを飲み込め、獄炎」
「――すべてを斬り焼く、千刃火」




