74「炎VS炎です」①
「――ランドルフ、私が癒しましょう」
「助かる、ヘルミーナ」
嘆きのヘルミーナは、二十歳ほどの美女だった。
元聖女であることからか、修道服を連想させるも真っ白な衣装を身につけている。
だが、その衣装も血と土に塗れてしまっていた。普段は隠している髪も、金色で長く絹糸のようだ。
華奢な肉体から戦いに向いていないと思えてしまうが、人間であった時は常に前線に立っていた過去を持ち、神となったことで強い戦闘能力を有している。
「ランドルフを任せたわよ、ヘルミーナ。私は、あの小娘を殺すわ」
「待て、グリムレン。彼女は、ウルリーケ・ウォーカー・ファレルだ」
「――あら、あの子が? サミュエル・シャイトの師匠で、創造神の執着相手のひとりだったわね」
「それに、勇者だ」
「それは大した問題ではないわ。私はあなたと違い、生前勇者だったなんて大それた過去はないのだけれど、勇者も魔王もすべて焼き払った魔女よ」
かつて世界を炎で支配した稀代の魔女が笑う。
「グリムレンの実力を信じている。それでも、油断するな」
「油断などしなわ。私は誰と戦う時でも、全力でも燃やすの」
「――なら、神の炎はこの程度ってことでいいんだな?」
燃え盛る炎の中から、ウルの声が響く。
これには紅のグリムレンがぎょっとする。
「まだ、生きているのね。正直、驚いているわ」
グリムレンの声に動揺が混ざっていた。
神々として、魔女として絶対的な自信を持つグリムレンにとって、自慢の炎に焼かれながら絶叫ではなく、普通に会話をするような声が響いてくることが異常事態だった。
「じゃあ、今度はこっちの番だな」
ウルが腕を大きく振るうと、炎が掻き消えた。
無傷――とは言わないが、まだ余裕のあるウルが五体満足で立っている。
しかし、右腕はひどい火傷を覆っていた。
「反射的に右腕で受け止めてみたんだが、ギュンターに作らせた戦闘衣ごと右側を焼きやがった。下ろしたてなのに、ぶつくさ言われたらお前のせいだぞ」
よく見れば、ウルの右頬や、右側の首にも火傷があった。
一番ひどい場所は右腕であり、火傷を負い、血を流している。
戦闘衣も右腕だけではなく、右半身部分が焼かれなくなっていた。
肉体に大きなダメージがなかったのは、戦闘衣のおかげもあっただろう。
「神の炎……期待していたよりもずっと大したことはないじゃないか、と言いたいが、久しぶりにこれほどダメージを受けたな。うん、やはり褒めてやろう。完全に力を振えないようだが、よくやった、とな!」
「舐めるなぁああああああああああああああああああああ!」
同じ炎の使い手として、あまりにも上からなウルの言葉に紅のグリムレンが激昂した。
「ならば灰にしてくれる! 私は紅の魔女と呼ばれた、最強の炎使いグリムレンだぞ!」
「スカイ王国宮廷魔法使い、ウルリーケ・ウォーカー・ファレルだ」
両者は同時に、真紅の炎を撃った。




