72「ウルと神々です」②
「これはこれはっ、神様に名前を覚えてもらっているとは光栄だっ!」
魔法を使っていないにも関わらず、ウルから肌を焼くような熱を感じた。
彼女の昂る魔力が、とんでもない熱を帯びて放出しているのだ。
「だが、神が相手だ。きちんと名乗らせてもらおう。私は、ウルリーケ・ウォーカー・ファレル。お前たちをぶっ殺す人間だ」
ウルが激情のランドルフに向かって歩みを進める。
彼女の一歩一歩の足跡に炎が宿る。
「私はずっとずっとこの日を待っていた」
「なんだと?」
「今まで全力を出したことがなかったんだ。それだけの敵に出会うことができなかったというのもそうだが、病に蝕まれてしまってな」
ウルが近づけば近づくほど、ランドルフの肌が焼け付く痛みを覚えていった。
「万全だったとしても、弱者と全力でなど戦えない。戦いは楽しくないといけないだろう?」
「戦闘狂め」
「褒め言葉だ! てっきり私の全力を受け止めてくれるのはサムだけだと思っていたが、まさか神々が私に殺されるためにこの世界にきてくれるなんて――最高だ!」
轟っ、とウルを中心に炎の柱が何本も生まれた。
地面に生える草木が焼け、火の粉が散る。
再生の集中していた他の神々が、ウルを全力で警戒し、身構えた。
「――ウルリーケ・ウォーカー・ファレル、貴様、勇者か」
「らしいな。だが、私が勇者だろうと魔王だろうとなんだろうと知ったことではない。私は私だ。それ以上でもそれ以下でもない。というか、お前たち……いつになったらかかってくるんだ?」
激情のランドルフは、額から流れてきた汗を拭い叫んだ。
「――驕るな人間風情がっ! 貴様が勇者であったからなんだという! 私も勇者だった! 何度も死線を潜り抜けた勇者だ! だからこそ、選ばれ神に至った!」
「……それで?」
「貴様は規格外の魔力を持っているだけの、ただの人間でしかないことをわからせてやろう!」
ランドルフが地面を蹴った。
目にも止まらぬ速さの移動は、転移のように感じるだろう。
ランドルフは力を膂力に注ぎ、ウルの身体をくだかんと拳を振るう。
――が、難なく拳はウルによって受け止められた。
「頼むよ、神様。眠くなる」
ウルがランドルフの拳を握り砕き、もう片方の空いている手を拳にして固めると魔力をこれでもかと込める。
身体強化魔法が何重にも掛かり、拳の炎が宿った。
ランドルフが目を見開く暇もなく、彼の頬をウルの拳が捉え、そのまま地面に叩きつけた。




