71「ウルと神々です」①
激情のランドルフは、肉体の再生を終えたことを確認すると身体の調子を試してみる。
世界の意思によって大きく力を消耗させられたが、体力面では元に戻った。
だが、肝心な神力は尽きかけていた。
「……この程度の力では神とは言えんな」
自嘲するような口ぶりだが、それだけ世界の意思の攻撃が凄まじかったのだ。
彼女の一撃は、ランドルフたちを肉体はもちろん神力ごと斬り裂いたのだ。
一対一であったら殺されていたかもしれない。
世界の意思の力が、他の神に分散したことでランドルフに対しての一撃は若干であるが弱まっていたはずだ。そうでなければ、肉体と神力ごと斬り殺されていただろう。
かつて人として勇者としてとある世界で戦い続けたランドルフの全盛期を超えた力を現在も持っている。
だが、神として有していた力は、世界の意思に斬られたことと、肉体を再生するのに消費したことで、半分以下しかない。
これでは神を名乗ることはできず、不出来な存在である。
それでも、使徒や天使に比べると遥かに強い力を持っているのは変わりない。
「――たかが人間や魔族を殺すには十分すぎる力だ」
驕りではない。
この世界の住人たちを馬鹿にしているわけでもない。
ただランドルフは己の実力に自信があった。
神を名乗れるほど弱体化したとしても、人間や魔族を殺すには十分すぎる力であると理解していた。
かつて、自分がそうであったように、どれだけ強くなろうとも限界があることを知っているからだ。
神になって、自身の限界がちっぽけなものであると理解した。今まで強くなったと喜んでいたことが、神の視点ではたいしたことではないと思い知らされたのだ。
――ゆえに、ランドルフは恐れない。
一番の難敵だった世界の意思とはもう戦うことはない。
ならば、世界を蹂躙し、楔を破壊するだけだ。
「その前に衣類を調達しなければな。さすがに血に濡れてあちらこちらが破けていたのでは格好がつかぬ」
一番軽症であったランドルフ以外の神々は、まだ再生に時間がかかっているようだ。
ならば仲間の代わりに衣類と食料を調達してこよう。
神も生きていれば腹が減る。
戦いの前に、腹を満たし、今できる万全の状態で世界と戦おう。
それが戦士としての礼儀なのだ。
「――さて」
仲間たちのために動こうとしたその時だった。
「――よう! 随分とぼろぼろじゃないか、神様!」
空から真っ赤に燃えるような赤髪を靡かせ、赤い少女が降ってきた。
「――ウルリーケ・ウォーカー・ファレル」
激情のランドルフは、獰猛な笑みを浮かべる少女の名を無意識に口にしてしまった。




