68「マニオンの試練ですか?」①
スカイ王国の防衛は信頼する仲間たちに任せることにした。
ウォーカー伯爵家は準魔王ジェーンと魔王ロボが守ってくれている。子竜三姉妹もシャルロッテたちを守ると鼻息荒くしてくれている。
王宮には準魔王ゾーイたちが、クライドと連携するために向かった。宮廷魔法使い、魔法軍と連携し、王都を守ることになっている。
女神エヴァンジェリンの神殿では、エヴァンジェリンとモンド、聖女霧島薫子が先頭にたち王都の守護を王宮と共に、何よりも王都に住まう人々のために戦うことを決めている。
準魔王カルミナ・イーラと魔王遠藤友也の弟子であるアマリア・ショーンは、最悪の事態に備え、いざという時には民を転移によって逃すことになっている。
友也もその場合は合流し、多くの人を各領地に逃がすのだ。
戦いの準備は完全ではないが、整った。
正直、行き当たりばったりの面も多々あるが、これは相手が神である以上仕方がない。
できることならサムたちが使徒を倒す。
それさえできればいいのだ。
「――ついに戦いが始まるんですね」
マニオン・ラインバッハは、スカイ王国の城下町を歩いていた。
「神は四人。元勇者、元聖女といった傑物たち。いくら兄さんが強くても、弱体かしているとはいえ神は神。荷が重いかな」
神々に対しての詳細は知らないが、マニオンはこの世界に降り立った神々の力を感じ取り、サムよりも上だと理解した。
ただ、サムの力は常に抑えられていることを知っている。
意識しているのか、無意識にやっているのか不明だが、必要のないときはこれでもかと力を抑え、必要な時に爆発するような力を露わにする。
それがサミュエル・シャイトだ。
実際、戦ってみて、彼の癖はわかった。
あくまでもマニオンが感じ取った限りではあるが、サムと神々の差はそこまでない。
何をしても覆すことのできぬ実力差がある――わけではない。
マニオンは、その実力差に勝機があると考えていた。
――同時に疑問もある。
「……なぜたった四人なんだろうか?」
神々がこの世界の楔を確実に破壊しようというのなら、倍の数で来るべきだった。
サム、ウル、レプシー、カリアン、綾音、友也、他にも何名か規格外な存在がいる。
彼らを絶対的に潰すのであれば、それ以上の数を、せめて同等の数を用意すべきだったと思わずにはいられない。
「……神々も一枚岩ではないと聞きますが、戦神のリアクションに対し他の神が動くこともある。ヴァルレイン様でも知らない神は多く、今後の展開が読めない。ゆえに、ヴァルレイン様はこの世界を自らが支配し、守ろうとしている」
もちろん、愛される神になりたいという欲望があるが、民を傷つける気はない。
世界の意思がヴァルレインを受け入れるのであれば、この世界を命をかけて守ろうとさえするだろう。
マニオンは、愛情と戦いの女神ヴァルレインのように強く、厳しく、優しい神は他に知らない。
彼女のためなら、再び得た命さえ惜しくない。
「考え事をしてしまうのは僕の悪い癖、か。兄さんたちのように目の前のことに集中しないといけないな」
気づけば、王宮が目と鼻の先にあった。
敵対するつもりはなくとも、ここにいる資格はないマニオンは引き返そうとして、背後から声をかけられた。
「――そなたから良きビンビンを感じるのである」
「――――ひっ」
マニオンの背後にクライド・アイル・スカイがいた。




