65「王宮は賑やかです」②
「個人的な感想を言わせてもらうと、そなたはロイグを解き放つとは思わなかったのである」
「あら、嫌だわ。私だって、世界の危機にロイグとふたりで終焉を眺めるほど酔狂では……それもありね。冗談よ、だから、変な顔をしないでちょうだい」
ジュラ公爵は冗談を言ったような言い方だが、クライドたちには真顔に見えたので何も言えなかった。
死別した元婚約者を捕まえてからの日々を考えれば、ロイグを監禁し、世界の命運など知ったことではないと自分たちだけの時間を過ごすくらいはやりそうだった。
「こういうことを言うと誤解されるかもしれないけれど、私は世界が滅ぶなら滅べばいいと思っているわ。それが自然のことなら、私たちも自然から生まれた一部なのだから仕方がないわ。でもね、よくわからない神だかなんだかが現れて好き勝手やるのであれば、話は別よ。私に力があれば、もう殺しているわ」
「……それゆえに、ロイグを戦いに行かせたのであるな」
「ええ。あの人から情報という情報は全て吐かせたから、止める理由はないわ」
「……どうやって情報を吐かせたのかはロイグの名誉を守るため聞かないでおくのである」
「そうしなさい。きっと羨ましくなってしまうはずよ」
ウインクするジュラ公爵にクライドたちは「絶対羨ましくない!」と心で叫んだ。
口に出す勇気はなかった。
「可愛い娘たちの結婚も控えているし、孫も抱きたいわ。抱っこ的な意味でね。いくら私でも倫理的におかしいことはしないからざわつくな男ども!」
「びっくりしたのである」
「まあいいわ。ついでにサムも抱きたいしね。あ、男女の営みという意味でね」
「誰か騎士を呼んでくるのである! サムが大変なことになってしまうのである!」
「冗談よ。さすがにロイグとちゃんと通じ合ったのだから、サムに手を出すことはしないわ。――――多分」
「そこは断言してほしいのである!」
この場にいる誰もが、世界を守るために戦うサムが、さらなる相手と戦わなければいけないことに涙をした。そして、助けることができない不甲斐なさに悔しくなった。
同時に、ベッドの魔王と名高いサムがジュラ公爵と戦ったらどうなるのかちょっとだけ、本当にちょっとだけだが興味があったのだ。
「……正直なことを言うと、ロイグは戻ってこないかもしれないわ」
「――っ」
「それだけの覚悟を持って、虹の女神の使徒になってこの世界に戻ってきたのだから。その理由は、私の口からは言えないけれど、今度はちゃんと見送れたからもういいわ。――それに」
ジュラ公爵は愛し気にお腹をさすった。
クライドたちが「まさか」と目を丸くする。
「私の中に、ロイグ・アイル・スカイがいた証がちゃんと宿っているわ」
艶やかな笑みを浮かべたジュラ公爵に、驚きのあまりクライドは叫んだ。
「おぎゃぁあああああああああああああああああああああっ!」




