61「戦いの前です」②
「ま、言いたいことは山のようにあるし、訂正すべき件もあるんだけど、それは後にしておこうか」
サムは首を回し、肩を動かす。
軽いストレッチを始め、戦う準備をした。
いつ神が来ても良いように身体づくりはしていた。
風邪も引いていない。
体力の無駄遣いもしていない。
守るべき大切な家族たちがいるので、心も不思議と落ち着いている。
「……さてと。ウルが抜け駆けした以上、戦いは始まるだろうから、俺たちも行きますか」
「そうですね。今までは後手を甘んじていましたが、今くらいは先手を打ちたい。格上が相手なのですから、少しでも有利でありたいですね」
クライド・アイル・スカイが世界の楔のひとつであっても、他にも重要な楔があったとしても、そんなことは関係ない。
神々を倒せば良い。
「友也、王宮に報告に行ってくれ。陛下はもちろんだけど、旦那様たちにも連絡を頼むよ」
「わかりました」
「あと、エヴァンジェリンさんたちにもお願い。おそらく気づいていると思うけど、念のために」
「ええ、そうしましょう。では、いってきます」
友也は早々に転移で王宮と神殿に向かった。
あちら側がどのような動きをするのかわからないが、とりあえず陛下は縛って王宮の奥深くに隠しておいてほしい。
「サム、全員で神々と戦いますか?」
カリアンが静かに問うと、サムは首を横に振って否定した。
「あくまでも俺の考えなんだけど……全員で戦うことは避けたいんだ」
「……尋ねておいてなんですが、私も同感です。戦力が必ずしも神が四人とは限らず、伏兵がいるかもしれません。もしかしたら我々が気づいていないだけで使徒もいるかもしれないのですから」
「――うん」
カリアンの言う通りだった。
神々が地上に現れたことにははっきり気づけたもの、使徒である父ロイグと弟マニオンがこの世界に現れたことにはまるで気づかなかった。
他にも使徒がいないと断言ができない以上、念には念を入れておくべきだ。
敵はただこの世界で全力で戦えば良いが、サムたちには守るべきものがあまりにも多い。
戦力を分散してしまうことでリスクもあるが、戦力を集中してしまうことでのリスクもあまりにも大きかった。
「神々と戦うのは、ウルと俺、綾音さん、レプシー、友也、そしておじいちゃんで行こうと思う。他のみんなは、スカイ王国を、陛下を守ってほしい」




