57「ウルは殺る気満々です」②
サムの目から見ても、ウルが荒ぶっているのがわかった。
風呂を邪魔されたからか、それとも何か別の理由があるのか。
(……ウルって自分がしていることを邪魔されるのが嫌いんだもんねぇ)
「というか、ウル! みんながいるんだから、バスローブ姿はさすがに」
「……ん? ああ、そうか」
ウルもよほど慌てて出てきたのだろう。
身だしなみを整えていないことを自覚すると、ぱちんっ、と指を鳴らした。
すると、いつの間にか着替えを持ったギュンターがウルの背後に周り、タオルを広げたと思ったら、着替えが終わっていた。
「――ご苦労。腕は落ちていないようだな、褒めてやろう」
「ありがたき幸せっ!」
赤を基調とした宮廷魔法使いの戦闘衣を身につけたウルが満足そうな顔をしている。
スカイ王国王家の色である青を宮廷魔法使いは少なからず身につけるものだが、さすがウルというべきか彼女の戦闘衣には青は入っていない。
「急な成長だったが、戦闘衣が間に合ってよかった。さすがギュンターだ」
「夜なべして作らせていただきましたっ!」
「青は?」
「ハンカチがポッケに入っています」
「よし。良い仕事だ」
「ははぁっ!」
できる執事みたいに振る舞いながらも、ギュンターはややオーバーリアクションだ。
誰もが神々が来る、という緊張感を忘れ呆けてしまっていた。
「――さすがウルお姉様とぎゅんぎゅん様ですわ! 幼少期から培われた主人と奴隷の関係、素敵ですわ!」
「素敵かなぁ!?」
「もう、サムお兄様ったら嫉妬はいけませんわ。ここは学ぶべきですわ」
「……いやいや、クリーさん。クーリさんや。嫉妬する要素も学ぶ要素もないからね。じゃーなーくーてー!」
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、とサムが手を叩く。
「ウルとギュンターが驚くほどいつも通りだから、思考が止まっちゃったけど、神々が来るんだけどね! それぞれ、戦う準備はいいかな?」
サムの問いかけに、空気が再び引き締まった。
みんなが強く頷く。
「あちらさんはこっちの世界でやりたい方だすると決めてくるんだから話をするだけ無駄だよね。じゃあ、することは簡単だ。戦って、勝利する。楔は壊させない」
「サム、もっと簡潔でいいだろう」
ウルが獰猛に笑った。
「作戦もなにもない。神は殺して殺して殺し尽くす。それだけでいい。私の邪魔をした神々は切り刻んで擦り潰して焼いて灰にしてやる!」
(……そんなのお風呂タイムを邪魔されたのが気に入らなかったのかなぁ?)
サムは内心首を傾げたものの、これだけやる気のウルに心強さを感じていた。
「――さあ、神殺しの時間だ!」




