55「ジェーンさんの願いです」②
「ジェーンさん、俺は――」
サムはどう返事をするべきか悩んだ。
彼女のことは大事に思っている。
異性として意識しているかと言われたら、魅力的な人だからしていると言える。
だからといって、いきなり関係を進めることは難しい。
「困らせることをお伝えてしてしまい申し訳ございません」
「あ、いやいや、困ったわけじゃないんだ。誠実に応えたいと思うんだけど、急だったから言葉に悩んじゃって。俺はジェーンさんのことをまだまだ知らないことだらけだけど、さっきも言ったようにもう家族だと思っているから、スカイ王国で一緒に暮らそう。俺たちの関係がどうなるのかは、もう少し時間をかけてくれると嬉しいかな」
「――ありがとうございます、サミュエル様。嬉しいです」
ジェーンはどこか安堵したような、嬉しいような顔をしていた。
まだ彼女と時間が足りない。
サムはそう思う。
まずは家族としてゆっくり時間を過ごしたいと考えた。
「今のサミュエル様の負担にはなりたくないので、私が何を言いたかったのか、遠回りしてしまいましたがお伝えてしておきます」
「うん?」
「私の力のすべてを使い、このお屋敷とご家族を守るとお約束しましょう」
「――っ」
「生まれて初めて、誰かのために力を使いたいと思えました。それだけで、私は幸せです」
「いいんですか?」
「もちろんです。私を家族と思ってくださるのであれば、サミュエル様の大切なご家族を託してください」
「――お願いします、ジェーンさん。家族を守ってください」
「はい、命を賭けてお守ります」
サムに向かい、ジェーンは恭しく礼をした。
「できることならもっと話をしたかったのですが、残念です。サミュエル様、――お客様がいらっしゃいました」
「え? それはどうい――――っ」
――世界が歪み、揺れた。
「――づっ、まさか、これは」
「神界から神々が無理やりこの地に降りてこようとしていますね。ある一定の力がない人には気づくことができないので世界中で混乱が起きることはないでしょうが、気づく方は気づいたでしょう」
「これだけの力に気付けないのか……」
「大きすぎる力には気付けないものです」
サムは魔力を高めて飛び立とうとした。――が、ジェーンに腕を掴まれてしまう。反射的に振り払おうとしたが、ぴくりとも動かなかった。
「落ち着いてください、サミュエル様。神々がこの世界に降り立つまでまだ数時間あります。他の方々も気付いていると思いますので、合流し、きちんとお話をしましょう」
「――ふぅぅぅ」
サムは大きく息を吐き、反省した。
急に熱くなることがサムの悪いところだ。
今は冷静に動くべき事態だ。
ぱんっ、と両頬を叩くと冷静さを取り戻した。
「ありがとう、ジェーンさん。まずはみんなの元へ」
「――はい」




