54「ジェーンさんの願いです」①
ジェーンは夜空に輝く星々を眺めながら、語り始めた。
「――自慢をするわけではありませんが、私はとても強いのです」
「そう、みたいですね」
強いことはわかっている。
おそらく、サムよりも上だ。
規格外であるウル、カリアン、綾音レベルか、もしかしたらそれ以上の可能性だってある。
「私自身、自分の強さをすべて把握しているわけではありません。強くなる意味がまったくないので、特別何かをしたこともないのです」
まったく嫌味に感じないのは、ジェーンが語ることが事実だからだろう。
彼女の力があれば、己を鍛えあげて戦わなければならない相手と出会ったこともないだろう。
そもそもジェーンは戦いそのものを好いていないので、なおさら強さに興味がないはずだ。
「たまに誤解されますが、私は魔王に至ったことはありませんし、世界の意思と会ったこともありません。念のために言ってしまうと、神々の使徒や関係者でもないのです。私はただ強いだけのジェーン・エイドです」
正直なことを言ってしまうと、ジェーンの強さは神々の使徒かそれに準ずるものではないか、もしや、神が人の世にいるのではないか、と疑ったこともある。
こればかりはジェーンの言葉を信じるしかないが、嘘をついているとは微塵も思わなかった。
「かつて、私は友達だと思っていた子に自身の力のことを教えました。友達ならば受け入れてくれると思いました。規格外な力を持つ者は魔族でも忌避されますので、勇気が必要です。魔王遠藤友也様が、まさにそうですね」
「……友也の場合は、力以前に体質が忌避される気がするんだけど」
「ふふふ、それも個性です」
個性、と一言で済ませてしまうジェーンがすごいと思った。
「それで、友人はどうだったのでしょうか?」
したくない質問であったが、サムはあえて尋ねた。
ジェーンが「友達だと思っていた子」と言っているので、結末はもうわかっている。だが、もしかしたら、と思い耳を傾ける。
「面白いくらいに豹変しました。忌避されたのではなく、私の力を使い、国を作り王になると言い出しました。もともと野心があったのでしょう。魔王の娘であるから友達だったのかもしれません。まるで、その時に考えたとは思えない友達の壮大で穴だらけの願望ばかりの計画を聞かされました」
「……それは、なんていうか、言葉もないよ」
「私もです。もともと、そういう子だったのでしょうね。後で知りましたが、一族が魔王になろうと企んでいたようです。魔王を何か知らずに、です」
その後、その友達がどうなったのかはジェーンは語らなかった。サムも尋ねなかった。
「似たようなことが、四度ありました。私の力を知ると、人は狂います。なぜか私を利用しようとします。もしかしたら、私が相手の性根を見極めることができなかった、それだけの話なのかもしれません。ですが、私は私なりに傷つきました」
「俺でも傷つきますよ。さすがに、それはない。そんな奴らは友人じゃない」
「今は私もそう思っています。そんなことがあったので、私は誰かに力を明かすことはしませんでした。もっとも、父をはじめ気づいている人は多いですけどね」
本人は力に対して無頓着のせいなのか、隠そうと思っていても隠しきれていない。
「私は失敗し、後悔もしました。それでも、まだ、私の力を含めてすべてを知って受け入れてくれる誰かを求めています。ありのままを受け入れてくれる場所を探しています。――そして、見つけました」
ジェーンは真っ直ぐにサムを見た。
目と目が合った時、初めてジェーンの感情に触れた気がした。
彼女の微笑という仮面が剥がれ、その下にあったのは「寂しさ」だった。
「サミュエル様はどれだけ強くなると、楽しんでおられます。苦難に立ち向かい、乗り越え、みんなと笑い合い、本当に楽しそうです。スカイ王国も今までのどの国とは違う懐の深さがあります。私は、サミュエル様たちとこの国で楽しく暮らしたいのです」
ジェーンさん「私とても強いんです」
スカイ王国の民「ふーん、それってどのくらい変態なの?」
ジェーンさん「いえ、変態ではないのですが」
スカイ王国の民「つまり初心者か。ならばようこそスカイ王国へ!」
ジェーンさん「――とぅくん」
シリアス先輩「そうはならんやろぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
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