46「クリーは案じます」
(――リーゼ様も大変ですわね)
クリー・イグナーツは、尊敬する姉同然のリーゼの苦労を察する。
リーゼが中心になって、サムの妻たちを取り仕切っていることを「よろしく思わない」人間が一定数いることは知っている。
出戻りの女性だから、とそれだけで口やかましく陰口を叩く人間はいるのだ。
大半は、サミュエル・シャイトという有料物件を手に入れたリーゼへの嫉妬が大きい。
女性の方が年上で、出戻りの女性が成人したての少年と結婚というのは珍しいことだ。リーゼの離婚に彼女の非が一切ないことであっても、悪く思う人間は残念ながらいる。
そんなリーゼがサムの正妻として取り仕切る姿を面白くないと思う人間が出てきてしまうことは、他ならぬリーゼは覚悟した上で振る舞っている。
(わたくしもサロンを通じてそのような人間を極力排除しているのですが、どこからともなく湧いてくるので不思議ですわねぇ)
年長者であるリーゼが「やっかみ」を受けることで、アリシアやステラへの負の感情は少なくなっている。
アリシアも婚約者がいたが、サムと結婚した。円満離婚であるが、人によっては悪く受け取れるだろう。
ステラは、もともと「訳あり」だったことも関係している。髪の色だけで不義の子と疑われてしまい、心を痛めていた。国王夫妻の関係を知る者ならばそんなことを微塵も思わないのだが、「何か」を理由にして王族を突っつきたい人間がいるのだ。
ステラの妹レイチェルが悪い噂を流していたが、そんな噂に尾びれ背びれをつけて大きくした貴族たちもいる。派閥争いであったり、持て余した感情をぶつけたり、様々な理由から悪意が向けられた。
サムがスカイ王国王都に現れ、現在に至るまで一年と少しくらいしか経っていない。
クライド・アイル・スカイ国王陛下がかつての感情をとりもどし、貴族派貴族たちの大半が粛清され、スカイ王国は穏やかになった。
それでも、グレーゾーンの貴族はまだ多い。
良くも悪くも、大きな変化が起きて一年ほどしか経っていないのだ。
(サムお兄様に直接何かをできないからとリーゼ様に悪意をぶつける方々って本当に愚かですわねぇ。サムお兄様が愛する人に何かされて黙っているはずがないと言いますのに)
リーゼがサムを案ずるように、サムもリーゼを案じている。
クリーはサムとリーゼの手間を省くために、人脈を駆使して悪意ある人間を排除している。
現在は身重であるため直接動けないが、できることなら直接しばき倒したい人間もいた。
(……王都の貴族は面倒ですわねぇ。何かされても飄々と流しておくのが暗黙のルール的なことがありますし。ま、わたくしはそんなことしませんけど!)
クリーにとって、サムたちは家族だ。
大切な家族だ。
家族を侮辱されて大人しくしているほどクリー・イグナーツはできた人間ではない。
(――サムお兄様たちには憂なく子作りを励んでいただきたいものです。目指せ、お子様百人計画!)
たまにはクリーさんサイドを。
重複しているかもしれませんが、貴族のしがらみは面倒臭いということで。
作中だと一年であるため、大きな流れが生まれていても対応できない人がいるというのも事実です。
いずれビンビン王国ビンビン貴族として君臨するまでのちょっとした準備期間です!




