38「友也の喜びです」①
サムがマニオンと話をしている頃、ウォーカー伯爵家に魔王遠藤友也とその婚約者マクナマラ・ショーン、そして友也の弟子であるアマリア・ショーンが来ていた。
「――こんにちは! ラッキースケベおじさんだよぉ!」
「きゃきゃっ、きゃっきゃっ!」
ラッキースケベ大魔王と名高い遠藤友也のご挨拶に、サムとリーゼの娘にして聖女でもあるシャルロッテが手を叩いて喜んでいた。
「いないいない――ラッキースケベおじさんっ!」
「きゃきゃきゃっ!」
もうツボに入っていると言わんばかりの喜びようだ。
友也もまんざらではないようで、かれこそ三十分ほどラッキースケベおじさんとして愉快な言動を繰り広げている。
そのすべてがシャルロッテにとって面白いようで、瞳を輝かせて大喜びだった。
「…………お前はそれでいいのか?」
シャルロッテが喜ぶ度に、幸せいっぱいな表情を浮かべる友也にマクナマラが複雑な顔をしている。
そんな彼女の腕の中には、フランの娘レオナがいた。
まだ目ははっきり見えていないがレオナはマクナマラの指を掴んで離さず、時々口に運んでは咥えてしまう。その都度、フランが謝罪しやめさせるのだが、指が離れた瞬間に泣いてしまうので、「気にすることはない、可愛らしいではないか」とマクナマラは好きにさせていた。
アマリアはステラに抱かれて眠るテイリーのぷにぷにとした頬を触って微笑んでいた。不思議とテイリーはアマリアの近くにいると眠りが良いようで、普段はあまり昼寝をしてくれないのだが、アマリアがいるとよく寝てくれるようだ。
「構いません。僕は千年以上生きてきましたが、こんなに心穏やかでいられる日はあったでしょうか。――否、ない!」
「きゃっきゃっ」
孤児を引き取っていた時期もあり、子育てには慣れている友也だが、不思議なことにシャルロッテほど懐かれたことはない。
他の子供たちも友也に対しては、平然としているのだ。
普通、一般的な子は友也の膨大な魔力に怯えて泣く。
魔力をどれだけ抑えようと、魔力封じの道具をどれだけ使おうと、子供たちは敏感に受け取ってしまい恐れ泣くのだ。
しかし、サムの子供たちはまるで泣かない。友也の魔力を敏感に察していながら、恐れることはなかった。むしろ、まだ顔がきちんとわからないせいか、魔力で友也を認識している節があった。
こんなこと、初めてだったのだ。
そのせいもあって、友也はシャルロッテたちにメロメロだ。
「悲しいかな、僕は子供に恐れられて泣かれるか、指を指されて笑われるかしたことがありません」
「……師匠……悲しいです」
「本当にね!」
友也の境遇に、アマリアがなんとも言えない顔をした。
辛い過去を持つアマリアから見ても、友也のラッキースケベの日々は笑えないほど酷い。そんな友也が、口にしないだけでもっとたくさんの辛い思いをしてきたことくらいは幼くともわかる。
「優しい子ね、アマリア。どうかこの子たちの良き姉として仲良くしてくれると嬉しいわ」
「は、はい! 私でよかったら喜んで!」
リーゼの言葉に、アマリアは花が咲いたような笑顔を浮かべた。




