39「友也の喜びです」②
「だが、不思議だな」
レオナに指をしゃぶられながら、マクナマラが友也を見た。
「何度かウォーカー伯爵家に足を運び子供たちに合わせてもらっているが……友也は子供たちといるとラッキースケベしないんだな」
「――気付いてくれましたかっ!」
友也が待っていたとばかりに瞳を輝かすと、水樹の息子右京とアリシアの子サマンサが「びくぅっ」と驚き身体を跳ねさせる。だが、すぐに気にした様子もなくむにゃむにゃしはじめる。
花蓮の子純連は豪快に眠っていて声に反応さえしなかった。
「実を言うと、僕はこの子たちといるとラッキースケベをしないのです! その理由が聖女であるシャルロッテくんのおかげなのか、他の子供たちに何か特別な力があるのか、もしくはみんなのおかげなのかさすがに僕にもわかりませんが――今、ここが我がラッキースケベパラダイスです!」
「……あの、師匠。その言い方だとラッキースケベやりたい放題の大人の楽園みたいなことになってしまうんですけど」
「おっと失礼しました! しかし、アマリア、君も僕にラッキースケベされなくてよかったでしょう?」
「はい、とても!」
「ははは、言うようになりましたね。僕も嬉しいです」
少々友也のテンションが高すぎる姿に、ギュンターを思い出したリーゼたちだが、優しい彼女たちは決してそのことを口にしなかった。
「……個人的な意見だが、聖女のシャルロッテはさておき、他の子がもしもラッキースケベを止める能力を持っていたとしたら、国を挙げて喜ばれるのだろうが、なんか嫌だなぁ」
友也と赤子以外の、それこそメイドたちを含めて一同が「うんうん」と頷く。
もし「アンチラッキースケベ」とかいう力があっても、きっと子供は将来泣くかもしれない。または、対ラッキースケベ大魔王として勇者になる可能性もある。
「じゃあ、師匠は毎日子供のお世話をお願いします。私もお世話を一緒にしますから、その間にちょっと訓練をしていただけたら嬉しいです。もうラッキースケベはお腹いっぱいです」
「……アマリアはすっかり元気になり、よく学び、よく覚え、優れた子です。精神面も本当に逞しくなりましたね。今の君は立派なスカイ王国民です」
「えへへ」
「…………褒めてないですけどね」
友也の言葉通り、アマリアは明るく逞しくなった。
毎日のようにラッキースケベされることは当たり前で、師匠のラッキースケベ被害者に菓子折りを持って謝りに行くことも多い。
友也のことは恩人であり師匠として慕っているが、時々「わざとやっているんじゃないか?」と疑念を抱いてしまうこともあることは仕方がないことだった。
「ふわぁあ。なんだ、変態と変態の婚約者と弟子が来ているのか」
子供たちと和やかな時間を過ごしていると、あくびをしたウルが部屋の中に入ってきた。
「お姉様、お客様の前ですよ。あと、変態の婚約者と弟子という言い方ですとマクナマラ様とアマリアまで変態みたいに聞こえるのでおやめください」
「それは悪かった」
友也は「あ、僕のことはフォローしてくれないんですね」とウルを嗜めるリーゼに心の中で思うが言葉に出すことはなかった。代わりに涙は出そうではあったが。
「――ん?」
「え?」
「んんんんんん?」
ウルはぺこり、と小さくお辞儀をするアマリアを視界に入れると、じぃっと見つめた。
困惑気味のアマリアに近づくと、腕や足、腰、を無遠慮に触れていく。
何が起きたのかわからず目を白黒させながら、されるがままになっているアマリアに、ウルが満面の笑みを浮かべた。
「――アマリア、お前を弟子にする!」
「――ふえ!?」




