28「綾音っちの優雅な一日です」①
「――ふわぁ」
日比谷綾音の一日は意外と早い。
長い間封印されて眠っていたこともあり、睡眠はあまり好きではない。
時折、今までの日々がずっと夢の中だった、なんて悪夢を見てうなされることもある。
綾音にとって、封じられることは死ぬよりも嫌なことだった。
「……太陽が眩しいわね。ありがたや、ありがたや」
カーテンを開き太陽を拝む。
綾音にとって、太陽も久しぶりに見ることができた存在だ。
故郷の地球の太陽とは違うかも知れないが、太陽は太陽だ。
もちろん、寝る前には月にも拝んでいる。
「夢の中でルーとモアイが出てきたわ。太鼓をずんどこ叩きながら、早く転生したいとおねだりされたんだけど……ただの夢か、それともまじで干渉してきたのか、謎よね。ま、私の願望ってことにしておきましょう。――延々と太鼓と踊りを見せられたのが私の願望とは思いたくはないけれど」
窓を開けると、冷たい風が入ってきて心地が良い。
雪が溶けて春になったが、まだ朝夕は冷える。
「……熱いお茶が欲しいわね」
部屋に置かれているベルを鳴らせばウォーカー伯爵家のメイドが来てお茶の支度をしてくれるのだが、綾音はそれを望まない。
自分が偉そうにできる人間ではないとよく知っているのだ。
何よりも、過去では人を使う生活をしていたが、正直言って、面倒臭い。
自分のことは自分でやってしまうのが一番良いことだと思っている。
無論、雇われているメイドの仕事を奪うつもりはないので、あくまでも最低限のことを自分でするくらいにしている。
「結局、昨日は襲撃はなかったけれど、シャルロッテがギュンターにおかしなくらい懐いたのが衝撃だったわね。あれって、イケメンすぎて気に入ったのかしら? それとも創造神的な何かが聖女に通じたのかしら、それとも乙女のフィーリング的な感じかしら? どれも私にはまっっっったくわからないことだけど」
身体を伸ばすと、寝相がわるかったのか、ばきっぼきっ、と音がした。
「……嫌な音よね。歳ってわけじゃないんだろうけど、肉体はピッチピチだし。あー、でもお母さんがぎっくり腰を初めてしたのって、二十代って言っていたし、今は幼いプリティボディだけど……成長しない様にしておこうかしら」
実を言うと、魔力によって肉体を自在に成長させることができるのだ。
いくらサムが成人したばかりの少年とはいえ、幼すぎる肉体で相手にするには少々問題がありすぎた。
初めての夜と、その後も、「その時」になれば、同い年くらいや、ちょっと上の肉体年齢になっている。
現在も幼女ボディで生活しているのは、来る戦いに備えて力を溜めているからだ。
かつて、ウルリーケ・ウォーカー・ファレルと戦った時、炎によって死にかけた。
その時も弱体化していたが、さらに弱体化し、完全体に戻ってはいない。
それでも、復活したばかりの頃を上回る力を取り戻しているが、全盛期には遠い。
当時のウルとなら良い勝負ができると自負しているが、あの時からウルはさらに強くなっているので、今の状態だと五分五分だろう。良い勝負ができるという自身はあるが、殺されかけた時のトラウマがあるので、身体がうまく動かないかも知れない。
無論、再戦する予定などないが。
現在、肉体を必要な時以外に成長させないのは、「省エネ」としてだ。
かつてしていた鍛錬もしているし、神々を倒すことを決意している。
「私はサムとみんなと一緒に楽しく愉快に暮らすのよ。ルーとモアイとも再会して、今度こそちゃんとお母さんをするの。それまで世界を滅ぼされてたまるもんですから」
せっかく長い時間をかけて復活したのだ。
女神の支配もなくなり、妹との関係も少しずつ改善に向かっている。
綾音の人生はまだまだ続くのだ。
――しかし、綾音は疑問に思わなかった。否、思えなかった。
――どこの神が綾音と白雪に干渉してきたのか?
本作では神がいろいろ干渉していますが、正体不明の存在がいます。
もしかしたら察している方もいらっしゃるかも知れませんが、触れずにいてくださると幸いです。
綾音っちも今の生活を気に入っている――いえ、異世界での日々で一番幸せだと感じていますので、全力で守ろうとしています!
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