25「自棄酒を飲みたい日もあります」②
さっそくサム、カリアン、ゾーイの三人は乾杯した。
小ぶりのワイングラスに少しずつ注ぎ、ゆっくりと味わう。
「さすがドワーフさんたちだ。酒造りの情熱は素晴らしい」
「これはこれは……ベリーのような果実味を感じますね。ワイン樽ですか?」
「正解!」
「……ふむ、この味から察するに、ウォーカー伯爵領で作っているワインを寝かせていた樽か。ウイスキーそのものは若さが強いがワイン樽のおかげで満足感の強い。うむ。良い酒だ」
「……よく使っている樽までわかったね」
「ふっ、酒飲みなら常識だ」
(――お酒大好きな幼女か。年齢だけならかなり上だからお酒飲むのもいいと思うんだけど、こうやって対面して飲んでいると、悪いことを教えているようでなんか困る)
「そういえば聞いたぞ。なんでもシャルロッテがギュンターにえらく懐いたようだ……な? サム、どうした? 手が震えているぞ? 酒が足りないのか?」
「違います! シャルロッテちゃんは別にギュンターとなんでもないからぁ! 生後一ヶ月だよぉ? たまたま長身がいたから普段とは違う高い景色を見たかっただけだからぁ!」
「……サムが何を言っているのかよくわからん。ギュンターは度し難い変態だが、スカイ王国民からも、子供たちからも慕われている。おかしなことにはならんだろう」
「何も心配してましぇーん!」
「……酔っているのか?」
ゾーイとしては何気ない会話として話題を振っただけなのだが、サムは過剰反応してしまっていた。
可愛い愛娘が変態に瞳を輝かせている姿は、悪夢だった。
「ははは、サム。父親ならいずれは通る道です」
「俺だって十年後とかなら笑って見守るけど! 見守るけれど! まだ生まれて一ヶ月だよ!?」
「少々早いとは思いますが……いえ、早すぎるとは思いますが、子供はいずれ巣立つものですよ」
「もっとパパしたいんです!」
「気持ちはわかります。私もマクナマラに近づく男は排……いえ、相応しいか試したことは何度もあります。あの子は、今もあまり変わりませんが猪突猛進なので何かと心配ばかりする日々でした」
「……うん、まあ、その辺はわかるよ」
「ですが、それも次第に心配に変わりました。最近は、マクナマラに好意を抱く男性がいない、と。このままでは婚期を逃すのではないかと心配と不安に変わりました」
「あー」
「聖騎士となった時は誇らしくも、戦いなどしてほしくありませんでしたが……男性の部下と一緒に居酒屋で飲んだくれている姿を見た時は、心から心配と不安を通り越して諦めかけました」
「はっ、父親なんぞ勝手なものだな!」
「耳が痛いです」
すでに二杯目を飲み終えたゾーイの言葉に、カリアンが苦い顔をした。
「だが、羨ましくもある」
「ゾーイ?」
「私は、物心ついた時にはとある小国の教会の中で聖女として蝶よ花よと育てられていたのでな。親という存在は知らないし、今さら知りたくもない。それでも、子供に対し一喜一憂してくれる親がいるということは……幸せなのだと思う」
聖女として使い潰され、死にかけていたところをレプシーに拾われた過去を持つゾーイにとって、サムやカリアンのように子供に対し感情を動かしてくれるような相手はいなかった。
それは悲しいことだと思う。
だが、今のゾーイはひとりぼっちではない。
「ゾーイ、俺はゾーイの親にはなれないけれど、家族だと思っているよ。他のみんなだってそうさ。レプシーたちも、友也も白雪さんも、ゾーイのことをとても大事にしていると思う」「……そんなことは言われなくてもわかっている。私も、なんだ、その家族だと思っているしな」
頬を赤らめて、「家族」と言ったゾーイにサムは優しく微笑んだ。
「私は別に悲観しているわけではない。いずれサムと子供を作って立派な親になってみせる!」
「サム、モテモテですね」
「うっす。ありがとうございます! がんばります!」
酒のせいか、三人ともいつもよりも饒舌だった。




