22「愛娘の反応です」②
「サム、サムっ! しっかりしてください!」
友也に頬を叩かれて、意識を遠くに飛ばしていたサムが目を覚ました。
「――っ、シャルロッテは!?」
「リーゼ殿の腕の中ですよ。とってもふて腐った顔をしていますけど」
「……よかった。なぜかシャルロッテがギュンターと結婚してたくさんの孫を連れて遊びに来る夢を見ていたよ。とんでもない悪夢だった」
「…………ま、まあ、未来なんてどうなるのかわからないものですよ。僕もラッキースケベで魔王になるとは思っていませんでしたので、生きていれば予想もできないことは起きるものです」
「……俺は、悪夢のような未来が来るのなら、その未来ごと叩き斬るよ」
「ほどほどに」
とんとん、と肩を叩かれサムはゆっくり立ち上がる。
サムは気を取り直して、帰宅からやり直すことにした。
「ただいま、シャルロッテちゃん! パパが帰ってきたよぉ! 変態がいて怖かったでちゅねー。すぐに三枚におろしまちゅからねぇ!」
「――サム、君は……ばぶばぶをしているのかい!?」
「ばぶばぶしているわけじゃねえよ! 赤ちゃんに話しかけるからちょっと言葉を変えてみただけだよ! ばぶばふとは全然違うからね!」
シャルロッテに笑顔を見せたサムに、ギュンターが戦慄したような顔を向けてくるが、断じてばぶばぶではない。
ギュンターも子供が生まれたら、同じようにするに決まっている。
「サム、気絶しているようだったけど、大丈夫なの? 疲れているのなら、休んでね」
「大丈夫ですよ、リーゼ。ちょっと意識が遥か彼方へ飛んでいってしまっただけで、大した問題じゃありません」
「……とても問題な気がするのだけど」
「平気、平気! それよりもシャルロッテちゃーん! パパでちゅよー! ただいまー!」
「あばっ!」
リーゼの腕の中にいる愛娘は「おかえり」と言わんばかりに、しゅっ、と手を上げてくれた。
そんな娘の手を握り、サムはふにふにと感触を楽しむ。
実に柔らかい。
将来、美人になる手だ。間違いない。
「パパ抱っこしたいなぁー!」
「あぶぶ!」
まるで言葉を理解しているのか、サムの願いに王子て両手を伸ばしてくれるシャルロッテはとても可愛らしかった。
少々だらしない顔をしつつも、サムが手を伸ばした時、「きゅぴん」とシャルロッテの瞳が光った。
「――え?」
「ちょ」
リーゼの腕の中から飛び出したシャルロッテは、サムの腕を掴み、そのまま器用にくるりとサムの身体を這いながら一周すると、綺麗に地面に着した。
そして、シャルロッテの行動にびっくりして動きを止めていたギュンターの足を掴み、そのまま登り、あっという間に彼の腕の中に収まった。
たった数秒の出来事だったが、サム、リーゼ、カリアン、友也、そしてギュンターが呆然とするには十分すぎた。
「あら、まあ……赤ちゃんなのにここまで動けるなんて、将来有望ね!」
「いやぁあああああああああああああああああ! シャルロッテちゃんがギュンターに寝取られたぁあああああああああああああああああああ!」
「サムっ、流石にその言い方はちょっとやめていただこうか! クリーママに聞こえたら僕はどんな処罰をうけるのか恐ろしくて震えてくるのだけど!」
リーゼはシャルルに感心し、サムは絶叫し、ギュンターは妻に怯えるというなんとも言えない混沌とした空間が生まれてしまった。
「いやいやいやいや、その前に生後一ヶ月の赤ん坊の動きじゃないでしょうに! まずはそこからツッコミましょうよ! ねえ、お義父様!」
「……ふむ。シャルロッテは聖女と聞いていましたが、まさかここまでとは」
「あ、駄目だ。まともなのは僕しかいない! 誰かこの状況をなんとかして!」
友也が、まずシャルロッテの動きがおかしいことを指摘しようとするが、頼りになるはずのカリアンも想定外の出来事に混乱しているようだった。
――一同は、綾音が「うるさいっ!」と怒りに来るまで混乱していた。
ジャブからストレートです!
サムくん「シャルロッテちゃんに利用された! しかもギュンターに抱っこされるために利用された! 辛い! 心が辛い! 今なら、この辛さと怒りを込めて神々を瞬殺できる自信があるよ!」
クリー様「生まれて一ヶ月でぎゅんぎゅん様の良さに気づくとは――将来有望ですねわね!」
友也くん「懐、深っ!」
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