15「貴族たちは楽しそうです」
「ええいっ、静まらぬか! この変態どもめ! 成人したても、それも子供が生まれたばかりの少年をパパと! 世界の意思が認めたロリっ子をママと呼んではしゃぐとは、そなたたちは良い大人であろう! 恥を知るのだ!」
貴族たちが無駄にテンションを高くしてざわついていると、クライド・アイル・スカイの一喝が会議室に響き渡った。
空気が震えるほどの声に、一同が静まり返る。
そして、手当たり次第に物を投げ始めた。
「ふざけんな! このクソビンビン王が!」
「何が恥を知れ、だ! 大陸一の恥知らずが!」
「なんでもかんでもビンビン言ったり、世界の意思様に夫婦の営みの回数を相談したりするお前が一番の恥知らずだ!」
「そ、そなたら、言いた放題であるな!」
貴族たちもクライドにだけは言われたくなかったのだろう。
中身の入ったティーカップから始まり、最後には椅子まで投げてしまった。
「……よかろう! そこまで言うのであれば、拳で決着をつけるのである!」
「上等だ!」
「懐かしいのう、これぞスカイ王国流というものじゃ」
「腕がなりますな」
「どうせヒールできるんだ、腕の一本くらい噛みちぎってやる」
「なんなら三本目の足を食いちぎってやりましょうぞ!」
「いえ、さすがに食いちぎるのはちょっと」
「ええいっ、かかってこいやぁああああああああ! なのであるぅううううううううううう!」
あっという間に国王対貴族の殴り合いが始まってしまった。
サムとゾーイをはじめ、この光景を初めて見る者たちは口をあんぐりあけている。
「えぇ……これ、いいんですか?」
サムはジョナサンとデライトに近づき尋ねるが、彼らはなぜか涙ぐんでいた。
「あの、旦那様、デライトさん?」
「……ああ、すまないな、サム。まだ陛下が殿下だったころは、こういうことが日常茶飯事だったので懐かしくてな」
「思えば、クライド様が陛下になっちまって、大人になったっていうか変わっちまったと当時は寂しく思ったもんだ。だが、根っこは変わっていねえ。俺たちのビンビン陛下だ!」
「デライト、久しぶりに」
「ああ、そうだな!」
ジョナサンとデライトが上着を脱ぎ、指を鳴らし始めた。
「ちょ」
「ウォーカー伯爵、シナトラ伯爵!」
「よかった、イグナーツ公爵、ふたりを止め」
「私も一緒に行こう」
「いいですね」
「旦那も懐かしくなっちまったか?」
「――ふっ、またこの日が訪れるとはな。支えていた甲斐があったというものだ」
「えー」
常識人だと思っていたイグナーツ公爵までもやる気満々だった。
サムが止める間もなく三人は陛下と貴族たちが殴り合う輪に加わり、嬉々として喧嘩を始めた。
「……ふふふ」
「あ、おじいちゃん」
「スカイ王国では国王陛下と貴族たちの差がないのでしょう。政治においても、全力で意見を出してぶつかり合える。国としてのひとつの答えなのかも知れませんね」
「……いい感じにまとめようとしているけど、せめてこっちを見て言ってよ!? なんで壁見て話をしているの!? 説得力がないんですけど!?」
「……元気なことはいいことです。それよりも止めないと、ほら、ウル殿が」
「――あ」
殴り合いを見て感化されたのか、ウルがいつの間にか参加していた。
――十分後、ボコボコにされた大人たちが積み重ねられ、その頂上に乗った勝者であるウルが高々に拳を上げていた。
「――もう意味わかんない! 会議は終わり! 解散!」




