5「重要な会議です」④
クライド・アイル・スカイの猛々しい言葉に、スカイ王国の重鎮たちの心はひとつになった。
世界の意思を、女神エヴァンジェリンを守る、固く決意したのだ。
とはいえ、まだ神々は地上にやって来ていない。
魔法軍は練度を上げること、騎士団は個々の力を上げていく目標を掲げ、各貴族たちも情報収集、金銭面物資面でも支援、冒険者ギルドとの連携に力を入れてくれると約束してくれたのだ。
「ところで、シャイト宮廷魔法使い殿」
「はい」
「仮に、仮にだが、クライド陛下に何かがあった場合は世界の楔の役割はどのようになるのだろうか? 神々が何かをせずとも、病死や事故死、臣下の謀反などいろいろあるだろう?」
(今、さらっと臣下の謀反とか言いやがった。怖いな!)
「陛下の命が消えることが必ずしも楔の破壊というわけではないようです。俺も詳細はわかりませんが、世界の楔は誰かに引き継がれるようですが……」
「何やら、言い辛そうだが?」
「世界さんに楔の候補を聞いたのですが……エミル殿下だそうです」
「……エミル・アイル・スカイ第二王子殿下かな?」
「はい」
「ウォーカー伯爵家に竜のメルシー殿と婚約しようと定期的に侵入を試みていたエミル殿下かな?」
「……はい」
「いろいろ反省を促すためにシューレン魔法国に送り込まれたエミル殿下かな?」
「……は、はい」
「……陛下以上に守る気がしねぇ」
サムに尋ねた貴族は、萎えた、と言わんばかりに嫌そうな顔をした。
他の貴族たちも、クライド陛下が楔だと知った時のように、やる気がしなしなとなくなっていくのがわかった。
「せっかく高まったはずの士気が落ちてしまうな、失礼した。エミル殿下の件は聞かなかったことにしよう。どちらにせよ、神々がもうすぐ来るのだ。ここで勝つしか我々には選択肢がないのだから」
「そうですね。その通りです」
エミル殿下が次の世界の楔になる以前の問題だ。
ここで負ければ、楔もなにも意味がなくなる。
「サミュエル殿、これは個人的な質問なのだが……構わないだろうか?」
「ええ、もちろんです」
「その、なんだ。世界の意思という我々が守るべき存在のご尊顔を知る術はあるのかな?」
「……どうなんでしょう。俺は夢の中であっていますけど……あ、魔王に至った時もあっているはずです」
「……難易度が高いな。いや、すまない。お守りする世界に人格があり美しいのであれば、お会いしてみたかった。それだけだ」
残念そうな貴族は、サムに謝罪する。
聞くだけ聞いてみた、そんな感じらしい。
(……確かに、守る相手の顔くらい見たいよなぁ。――世界さーん、聞こえますかー、ちょっとお顔を見せてもらうことってできますかー!? って、できるわけがないか)
貴族たちには申し訳ないが、サムも世界の意思とコンタクトを取る手段があるわけではない。
いつも一方的に夢で会うだけの関係性だ。
せめて自分に画力があれば、絵で描くこともできたのだが、残念ながら芸術面の才能はないのだ。
――そう考えていた時、世界が暗転した。




