2「重要な会議です」②
「ちょ、ちょ、ちょ待てよ! ちょっと待つのである!」
クライド・アイル・スカイ国王陛下は口調が崩れるほど、動揺してしまったようだった。
「私が世界の楔であることは聞いたが、どうして守るか守らないか悩む必要があるのであるか!?」
「――確かに、失礼いたしました。会議するまでのことではありませんでした」
「そ、そうである!」
「陛下は守らない、ということで解散!」
貴族たちが「いやー、疲れた疲れた」「今日の会議は早く終わりましたな」「この後一杯いかがですか?」「いいですなぁ」とそれぞれ会話しながら立ち上がる。
「……陛下泣いちゃいそう。でも、我慢しなきゃ。男の子だもん!」
「――という感じで、こんなのが世界の楔だというらしいが、そもそもどうしてこんなおっさんを全力で守らなければいけないのか悩ましい」
一度は立ち上がった貴族たちが席に戻る。
「私も、かつては姫君を守る勇者に憧れた者です。世界の危機、女神様をお守りするために命を捧げることは躊躇いませんが……守るのこのおっさんかぁ」
「わし、若い子の陛下に散々苦労されたのだが、そろそろ引退という時期に命かけさせられるのかぁ。嫌だなぁ」
「臣下たちの忠誠心低すぎである!」
「普段のお前の行動が元凶だろうが!」
「ひえっ、すみませんのである!」
貴族たちが怒鳴り、手帳やペンを全力でクライドに向けて投げ始めた。
お茶の入ったティーカップを投げないくらいの忠誠心は残っているようだが。
「良いかな、サミュエル・シャイト殿」
「はい」
「そもそも、世界の意思という我々には想像のできない存在とお会いになったというのは確かかな? 御息女と我が孫の縁談をよろしく」
「そこは信じてもらうしかありません」
「信じたくないわけではないが、そなたもスカイ王家の血を引く者。常人とは違う感情があると伺っている。幻聴とか幻覚とかいう可能性はないのだろうか? 御息女と我が孫の縁談をよろしく」
「幻聴とかそういうのじゃありませんから! 俺をスカイ王家で括るのをやめてください!」
「……とはいえ、確証がないのも困り者だ。……御息女と我が孫の縁談をよろしく」
「しつけぇええええええええええええええええええええ! 刷り込むように縁談の話を混ぜるな! 我が家の可愛い天使たちをもう奪う話しやがって、叩き斬ってやる!」
「ちょ、サム! 気持ちはわかりますけど、落ち着いてください! ほら、ステイステイ!」
サムは自分が疑われたことよりも、会話の最後に刷り込みのように縁談の話を入れてくる貴族にキレてしまい、隣に座っていた友也が必死で宥めることになった。
「……そこまでにしておくように。シャイト伯爵は子供が生まれたばかりで一番幸せな時期だ。水を差すのはやめてあげようではないか、我々にも覚えがあるだろう?」
「そうだったな。申し訳ない、シャイト伯爵」
イグナーツの取りなしで貴族は謝罪し、サムも許すことにした。
「いえ、こちらも冷静さをなくしてしまい申し訳ありません」
だが、サムにはわかる。
彼の目にはまだ諦めていない、と浮かんでいる。
可愛い我が家の天使たちを守れるのは自分だけだ、とサムは闘志を燃やした。
「わしからも良いかな? 世界の意思は美人かな?」
「はい、とても美人です。全身が白く、表情は動きませんけど、素敵な女性です」
「ならば!」
くわっ、と初老の貴族の目が見開く。
「陛下ではなく、その美しい世界の意思殿を守るために一致団結しようではないか!」
「素晴らしい!」
「そうですな!」
「不思議とやる気がみなぎってきます!」
「やはり男に生まれた以上、美しき女性をお守りしたい!」
貴族たちのやる気が溢れていく。
「…………こいつら本当にスカイ王国貴族だな」
会議に参加していたゾーイが呆れたように呟いた。




