間話「クライドとジョナサンの心配です」②
「ふむ、今日もシャルロッテたちと会ったのである。どこのもみんな可愛らしい。我が娘フランやレイチェル、そなたの娘たちが生まれた日のことを思い出すのである」
「そうですね。特にウルが生まれて数ヶ月で炎の魔法を撃ったことは今でも忘れられません。私の頬をかすめ、ひゅっ、てなりました」
懐かしむジョナサン。
ウルの初めて使った魔法によって壁を焦がした部屋は、今でも当時のまま記念として残されている。
「気づけばリーゼとアリシアが母となり、ウルもサムと婚約しました。エリカもヴァルザードと良い感じです」
「そなたにも新たな子が生まれるのであるしな」
「ははは、年甲斐もなくお恥ずかしい」
「良いではないか。とてもビンビンである!」
「……ビンビンかどうかはさておくとして、孫たちのことです」
空になったクライドのグラスにジョナサンがワインを注ぐ。
「何か懸念でもあるのであるか?」
「懸念といいますか、心配といいますか……縁談の申し込みがありすぎてひどいのです。さすがにサムではありませんが、そろそろキレそうですよ」
「……なるほど。私の方にも取り持って欲しいという声はあるが、面倒なので無視しているのである」
「陛下と違い、私は無視できる立場ではありませんので」
「困ったのであるな」
「なんといいますか、これから生まれてくる私の子にも縁談の話がくる始末でして……」
悩ましい、とジョナサンがワインをいっきに飲み干してしまう。
「申し込んでくる者たちを擁護するわけではないのであるが……ことの始まりはそなたであるぞ?」
「私、ですか?」
「うむ。ジョナサンである」
クライドにそう言われてもジョナサンはまったく心当たりがない。
「そなたの長女ウルリーケは、この国最強の魔法使いであった。立場的には他の者がいたが、実質最強はウルリーケであったのは誰もが知ることだろう」
クライドは続けた。
「そんなウルリーケに縁談を申し込んだ者は山のようにいるが、すべて断られた。そこで諦めた者はさておき、諦めが悪く直接ウルリーケに結婚の申し込みをした者の末路はそなたが一番よく知っているであろう?」
「……大半が再起不能となりましたね。懐かしいなぁ」
「懐かしんでは駄目であるのだが……」
ウルは気性の激しい子だ。
子は優しいが理不尽を嫌う。
それゆえに、女だからと上から物を言われると苛烈に怒りを露わにするのだ。
十年以上も前のことだが、ウルに縁談の話は山のようになった。
大半は、ジョナサンの丁寧なお断りの手紙か、ギュンター・イグナーツの奇行によって諦めてくれたが、諦めの悪い人間は何人もいた。
そういう人間に限って、自分ならウルを落とせる、と無駄な自信があったので始末が悪い。
女遊びばかりしている放蕩息子や、浪費癖のある馬鹿息子、中には魔法使いの血を欲する相手なら魔法使いの女性なら誰でもいいという者までいた。
――言うまでもなく、全員が他ならぬウルによって再起不能となった。
ひとりは男性として自信を失い、以後男性として機能しなくなった。
ひとりは、女性が怖いとトラウマになり同性同士の愛に目覚めた。
ひとりは、被虐趣味に目覚めた。
他にも数人行方不明者がいるが、些細な問題だ。
仮に、ウルによって撃退されずうまくいったとしても、おまけとしてギュンターが憑いていくのだから常人な精神力では持たないだろう。
「ははは、ウルには手を焼かれました」
「……ははは、で済ませていいレベルではなかったのである」
クライドが珍しく頬を引き攣らせた。
シリアス先輩「当時のウルがどうこうというよりもおまけのギュンターがやばすぎてシリアスじゃね!?」




