プロローグ「世界の楔です」
投稿ミスをしており、申し訳ございません。
数話、連投させていただきます!
サミュエル・シャイトは悩んでいた。
とても悩んでいた。
とにかく悩んでいた。
「――俺たちが守る世界のひとつがクライド・アイル・スカイ国王陛下ってこと? 本気で言っているんですか、世界さん?」
「無論、本気だ。クライド・アイル・スカイには多くの才能と、素質があった。何よりも、クライド・アイル・スカイの人柄は私の子たちに愛されている」
何度聞き返しても受け入れることができない。
クライドが世界の楔である衝撃は、サムを混乱させるには十分だった。
頭を抱えるサムに対し、全身を白で染めたような美しい女性――世界の意思は、特に感情を動かすことなく淡々とサムに事実を告げ続けた。
「陛下の愛されっぷりは知っていますけど」
「それは民の場合だろう。そうではない。サムも知っているはずが、クライド・アイル・スカイが精霊たちに愛されていることを」
「――それ世界の楔の伏線だったんですか!?」
やはりまた驚いた。
会話を重ねるごとに、驚くべき事実が飛び出てくるので心臓に悪い。
「逆だ。精霊たちに、大地に、海に、空に愛されているクライド・アイル・スカイだからこそ、楔にふさわしかったのだ」
「……陛下すげぇ」
「案ずることはない。サムも、愛されている。何よりも、世界の母である私に」
「ど、どうもありがとうございます。嬉しいです」
(案じてはいないんだけど、と言ったら空気読めていないってなっちゃうと思うけど、こうも真っ直ぐに、しかも、感情を浮かべずに言われちゃうと照れるべきなのか、困るべきなのか悩むなぁ)
「ち、ちなみに、もし陛下が……縁起でもないことで恐縮ですけど、神々や使徒ではなく普通に死んじゃったらどうなるんですか?」
「世界の楔を破壊することはただ命を奪えばいいわけではない。人が楔の場合は、命を奪い、穢す必要がある。人間の感情は不得意だが、負の感情を抱かせるなどして世界が楔として機能しないと認識させる必要がある」
「陛下がそこまでダークサイドに落ちることはないと思うけど、人間、何がきっかけになるのかわからないし」
「寿命や、病、悲しいが人の手によって命を奪われた場合は、身近な者に継承するようにしている」
「なるほど。ちなみに、陛下の次とかってわかりますか?」
「……何人か候補はいるが、サムの身近な者で言うならば――エミル・アイル・スカイだ」
「もうすでに魂が汚れていそうな人来ちゃった!」
サムは手で顔を覆って、この場に誰か呼びたいと心底思った。
この胸に抱く感情を誰かと共有したかった。




