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間話「クライドとジョナサンの心配です」①





 クライド・アイル・スカイは、一日の執務を終えてバスローブ姿でワインを嗜んでいた。


「……ふ、今日も良きビンビンであった」

「いえ、あの、そういうことはご自身の部屋でやっていただけると助かるのですが」


 悲しげな声を出したのは、この屋敷の主人であるジョナサン・ウォーカーだった。


「些細な問題である」

「些細じゃないですからね」

「いいではないか。フランシスはこちらに遊びに来たまま泊まってしまうし、コーデリアはレイチェルに付きっきりであるゆえに私が寂しんボーイなのだ」

「ボーイって歳じゃねえだろ」

「……今、なんか王に対する言葉じゃなかったような気がするのであるが」

「ははは、まさか。尊敬する陛下にそんな。生まれてから一度も不敬な言葉遣いなどしたことはありませんとも」


 つい本音が出てしまったジョナサンが誤魔化す。

 もともと学友であるため、つい言葉遣いが甘くなってしまうのは仕方がないことだが、「こんなの」でも「一応」は国王陛下である。

 あからさまに崩した言葉遣いをしてはいけないのだ。


「ところで、陛下」

「ビン?」

「…………」


 話しかけただけで、ジョナサンは心が折れそうになった。

 なぜ普通に返事ができないのだ、と問いかけたいが、きっとクライドの「普通」の返事なのだろうと思い、口を噤んだ。

 余計な会話を無駄だと判断したのだ。


「せめて王宮から脱走するのをおやめください。どうせ我が家かイグナーツ公爵家で捕縛されるのがお決まりなんですから、時間の無駄ではないでしょうか?」

「甘いな、ジョナサンよ。そなたは王ではないからわからぬものだが、古今東西、王とは王宮から逃げ出すものだ」

「……そんなわけがないでしょう」


 学生時代から、王弟ロイグ・アイル・スカイと共によく王宮から脱走するクライドだった。

 ジョナサンも若かりし頃は脱走を手伝ったことがあるが、大人になっても続けるとは思っていなかった。

 魔王レプシー・ダニエルズの墓守としての責務に押しつぶされていた時は、最低限の執務しかしていなかったが王宮を抜け出すことはなかったので、魔王の存在がどれだけ大きかったのか思い知らされる。


「そろそろイグナーツ公爵が起こりますよ」

「すでに怒られているのである」

「じゃあ、態度を改めましょうよ。私の部屋でリラックスタイムする暇があったら、生活態度を改めましょうよ」

「何を言う、ジョナサン。そなたの部屋でリラックスしているのは、私とそなたが親友であるがゆえではないか! ささ、そなたもバスローブに着替えてワインを飲むのである」

「……私が仕事しているの見えませんか!? 陛下が日中も邪魔するので仕事が進まなかったので、今も頑張っているのですが!?」

「仕事は一日の時間を決めて効率よくやるのが一番である。集中できない日は、割り切って明日に回すのもひとつの手であるぞ」

「…………この野郎」

「……今、この野郎といったのであるか!?」

「いえ、そんな。クソ陛下にそのようなことを言うわけがございません」

「そ、そうであるな。――ん?」

「ところで、せっかくなので少し真面目な話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」


 ジョナサンはペンを置き、仕事を終えた。

 クライドの言う通り、集中できないのであれば効率が悪いだけだ。

 本棚の奥に隠してあるお気に入りのワインを手に取ると、クライドとテーブルを挟んで向き合った。


「無論である」

「シャルロッテをはじめとした、サムの子供たちに関してです」






 サムくんが世界さんから衝撃的なことを言われている頃、陛下はバスローブ姿でワインをキメていました。


 女神エヴァンジェリン様「というか私が神であることを前提で話すんな! 神じゃねーし! つーか、ビンビン国王が楔かよ! どうすんだよ! ビンビン陛下を狙う神々と守るダーリンたちとか絵面的に微妙だな! そこは楔を私にするとか他に選択肢はなかったのかよ!」

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