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90「綾音の涙です」②






 ぜい、はあ、と肩で息をしていた綾音は深呼吸を繰り返して冷静さを取り戻した。

 情報量が多すぎてうまく処理できないので、日記の続きは後日見ることにした。

 アイテムボックスの中には、ルーシェルの日記だけではなく、アイリーンも日記、そして兄妹からの綾音への手紙も入っている。


「――ルーの方を読ませてもらおうかしら。モアイは日記を読んでからにしましょう」


 子供たちの名前を知っても、当時呼んでいた呼び方をしてしまう。

 ルーシェルの日記にも書いてあったが、どうしてアイリーンはモアイという名前を名乗ったのだろうか。

 当時の綾音は「も、モアイって」と人の名前だから笑わないように必死で耐えていた記憶があるが、笑っていたのはバレバレだったようだ。


「よいしょっと。これがルーの私宛の手紙ね。どれどれ」


 アイテムボックスから手紙を取り出し、便箋を開いた。



『――お母様、嗚呼お母様、なぜお母様はお母様なのでしょうか?』



「いや、もうそれはいいから! なんだかギュンターみたいな子ね!」


 綾音はあまり面識はないが、スカイ王国第二王子エミル・アイル・スカイにも通ずるところがある。



『この手紙をお母様が読んでいるということは、今、僕は亡くなっているでしょう。って、これ一度手紙に書いてみたかったんですよね!』



「――我が息子ながら明るいな、おい!」



『きっとお母様は僕の日記を見て、ルーが私の息子だったのね! 大好き! と涙を流しているでしょう。お母様の涙を拭けない僕をお許しください』



「えっと、うん、まあ、そうね。そうだけど、なんだかなぁ」



『お母様には申し訳なく思っています。勇気がないせいでお母様に名乗ることができず、騙していたこと。お母様が想い人と結ばれなかったのに、その方の親族と僕が結ばれてドヤ顔をしてしまったこと』



「後半いる? ねえ? 後半いる?」



『書きたいことは山のようにありますが、長くなり過ぎるのも良くないと思いますので僕の日記を読んでください。巷では、子供の日記を親が盗み読みするのが流行っているようなので、お母様も流行の波のっていただけると幸いです』



「……あー、こんな子だったわー。いい子だったけど、ノリで生きているような子だったわー」



『小粋なジョークでお母様の心をいい感じにほぐせたと思いますので、少し真面目にいきましょう。――僕は幸せでした』



「――っ」



『息子だと名乗れずとも、お母様と一緒にいることができました。お母様から教わった剣術や魔法で多くの人を救いました。子供もできたんですよ。僕も立派な父親、になれたらいいんですが、頑張ります。お母様からいただいた全てを心に、僕は良き領主と……あ、そうだ、もう名ばかり領主ですけど、アイリーンに全権奪われちゃったので。それでも頑張ります』



「いや、最後まで頑張ってよ! モアイは何をしようとしているの!?」




『――追記。ふたりがかりのばぶばぶっていいですよね』



「知るかぁあああああああああああああああああ! 元凶はお前かぁああああああああああああああああああああああああ!」



『そんなわけで、僕の手紙を読んでしんみりせず、笑ってください。お母様、あなたがいつの時代に復活したのか僕には皆目検討がつきませんが、どうかお幸せに。息子ルーシェルとして、あなたに可愛がってもらったルーとして、お母様の幸せを心からお祈りします。いつかまた僕の魂が転生したら、お母様に会いにきますね。それまでお元気で』



 綾音は涙を流した。

 手紙の中身は、綾音の知るルーだった。

 懐かしさと後悔。そして、何度も母と書いてくれていることへの感謝に、感情がコントロールできなかった。




「――ありがとう、ありがとう、ルー」






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バブバブの元凶はおまえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?Σ(・□・;)
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