88「ルーシェルの日記です」⑤
――今日は晴れ。見るもの全てが美しい。
気づけば、リリー様を目で追うようになっていた。気持ちに気づけば、彼女に恋心を抱いていることはすぐに理解できた。
彼女との日々は色鮮やかで楽しかった。
明日、僕はリリー様に告白しようと思う。
封印中のお母様、僕に力をお与えください!
遠くの空から、「頑張んなさいよ!」と聞こえた気がした
――今日も晴れ。きっと僕にはこれから毎日が晴れ晴れとした日々だろう。
告白を受け入れてもらった。
憎からず思ってくれたらしい。ただ、リリー様は年齢差を気にしていたようだが、僕は「リリー様が年増でも気にしない!」ときりっとした顔でキメてみたのだが、ボッコボコにされた。なぜかメイドや他の女性陣からも殴り、蹴られた。
ボロ雑巾となった僕に、最近領地で作ったウイスキーをいつも拝借して飲んでいるジョン爺さんが苦笑いしながら、「坊ちゃんさすがにありゃねえよ」と言った。
――解せぬ。年齢など気にしない。彼女が彼女でいてくれればそれでいいのに。
僕の嘘偽りない言葉に、ジョン爺さんは「なんでそっちを言わなかったのかねぇ」と呆れていた。やはり解せぬ。
だが、メイドのとりなしもあって、改めて想いを告げた。やったー! 明日は祝日にする!
――晴れ晴れとした日だ!
あれよこれよと結婚の日取り、準備が進んでいった。
飲んだくれのジョン爺さんが神父だったとは、ルーシェルくんもびっくりだぞ!
いるかいないかわからない神に愛を誓いたくなかったので、女神となったお母様に誓うことにした。なんだか、王都から邪教扱いされたが、妹ほどではないが僕も負けていない。口八丁であれよこれよと言い含めて、邪教扱いはやめさせた。夢の中でお母様が出てきて、「よくやったわね!」と褒めてくれた。
――晴れているのに不快だ!
王都からアルフレッド・ポーンとかいう気色の悪い男が訪ねてきた。
なんでもお母様を復活させるべく、国に戦争を仕掛けようと企んでいるようだ。
ふむ。詳細を聞いてみたが、ぜーんぶ僕任せ!
人を集めるのも、決起するのも、ぜーんぶ僕!
言っておくが、お母様は戦って敗北した。誇り高き勇者であり、女神とまでなったお母様が復活を望むだろうか?
欲を言えば、結婚式に出て欲しい、お母様が結婚できなかったサムエル・カイトの親族と相思相愛になって結婚することをドヤ顔したい。だが、今はゆっくりお母様に眠っていただきたいという思いもあった。
ずっと故郷でもなんでもない世界で勇者として戦うことを強いられたお母様がお休みする時間が必要だ。幸いにして、お母様な基礎を作っていた継承魔法は完成させたので、お母様に残すことはできる。
そーもーそーも、お母様なら自力で出てくるだろう! カルミナ・イーラって、あの気弱な隣国の王女だろ! あんな女にお母様が封印できるわけないでしょ! いずれ破綻するし!
おっと失礼。僕としたことが女性に対して口が悪かったね。
そんなわけでお引き取り願おう! ……正直、この日の僕はカッコよかったと思う。
――晴れ晴れとしていていい日だったのに水を差された!
先日来た、アルフレッド・ポーンがまた来た。懲りないな。
そもそも、こいつはお母様の仲間ではないのに仲間のような態度で常に後ろにいて、ドヤ顔している嫌な奴だ。僕たちがお母様の子供だと隠して近づくことを不満のようで、何度も怒鳴られ、時には暴力を受けた。僕が全力で止めなければ、今頃お前はアイリーンに殺されてその辺に埋められていたと言うのに……。
僕とアイリーンの素性を知ると、汚い笑い方をしながら近づいてきた時にメイドにボコボコにされたのを忘れたのだろうか。
あろうことに、アルフレッドは僕の大切なリリー様に向けて「こんな年増と結婚するなど、綾音様が悲しみます!」などと言い、僕は拳を強く握りしめた!
――だが、僕が全力の「ルーシェルパンチ」をお見舞いするよりも早く、リリー様とメイドによってボロ雑巾のごとく痛めつけられていた。
もういっそ殺してあげてよぉ!
可哀想なので、僕の領内で一番流れの速い川に流しておいた。ふう、すっきり!
――天気は晴れ! 太陽が僕を祝福している!
今日は結婚式! ひゃっほう!
……おい、待て。なんでメイドまでウェディングドレス装備して側室枠なんだ?
え? 許可は取ってある? 責任とってください?
お前! 僕に散々あんなことやこんなことをしておいて、責任を取れだと!
責任とって欲しいのは僕の方だ!
……あれ? じゃあ、いいのか。何か解せぬ。
まあいいや、メイドのことも好きだし。
結婚式は慎ましくも良いものだった。家族と呼べる領民たちち祝ってもらえて僕は幸せだ!
ちょっと待って、初夜って三人でするものなの!?
平等に!?
無理だよぉ!
んぁーーーーーーーーーーーー!
――天気は晴れ。
――よくわからないけど、妹が夫と子供を連れて領地に来た。
遊びに来たのかと思ったら、ここで国を造るといった。
――本当によくわからない。
たしゅけて、お母様!
という感じで綾音っちの息子くんの幼少期から青年期までを日記形式でお届けしました。
ちなみに、このダークエロフさんことダークエルフさんのメイドさんは、とあるエルフの関係者という噂が。
次回は綾音っちサイドです!




