87「ルーシェルの日記です」④
――今日は晴れ
一応というか、僕は勇者と聖女の血を引くイケメン王子なので、それなりに良い生活をしていた。と、言ってもまだ魔族と戦争中だ。お母様は魔族死すべしと言っていたが、僕はあまり気にしていない。正直なことを言うと、叔母さまが魔王になったことは知っているので魔族に対してちょっとマイナスなイメージはあるが、人間だって悪い奴はいる。僕の尻を狙う油ぎった公爵め……お母様にボコボコにされていたら屋敷に引きこもって物音ひとつに怯えていたくせに、お母様が亡くなった途端に屋敷から出てくるとは……とりあえずボコボコにしておいた。言っておくけど、お母様の苦行と妹の暴力で鍛えられた僕は、かーなーりー強いよ?
さて。僕の領主ライフはそれなりに良いものだ。幸いなことに、魔族との戦いから離れている。ならば、農業だ! 念願のスローライフだ!
くははははは! 実を言うと、お母様の遺品に、お母様の汚え字で書かれたお母様の世界での知識があってね! 農業や酒の作り方、メイドに給餌させて金を取る謎のメイド喫茶など金儲けの手段がやまもり! そういえば……なぜかお母様の故郷の字が読めるんだよねぇ。なんでだろう。妹は読めないんだけど。
――っ、これが選ばれし者か。つらいな、できる男というのは。
――今日も晴れ。
僕の領地は、母の想い人であるサムエル・カイトの故郷だ。戦火によって滅んだと聞いているが、それでも全ての人間が死んだわけではない。お母様と叔母さまがこっそり寄付をしていたようで今は結構立ち直っている。あとは僕の手腕で発展させていくしかない。
実を言うと、僕はサムエル・カイトの知り合いがいるのではないかと期待していた。彼は故郷が滅び、みんな殺されたと言っていたようだが、女子供は戦わせず優先させて逃げるようにするのものだ。希望は捨てないで探そうと思う。
――今日も晴れ。キラキラと輝いている!
サムエル・カイトの妹分を発見したぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ひゃっはぁあああああああああああああああああああ!
――今日も晴れ。ていうか、雨降れ。暑い。
見つけた女性は、リリー。サムエル・カイトの故郷の町で一緒に育った年が離れた親戚の妹分だったらしい。僕より少し年上かなと思ったら、十歳くらい年上だった。「え、詐欺」と根っこが素直な僕がつい口にしてしまうと、しばかれた。
僕、領主だよ? え、そんなの関係ない? ですよね。女性に対してなんて失礼な奴なんだ、僕は! 殴られて当然だ!
――今日は曇り。涼しい。
とりあえずリリー様のおかげで、サムエル・カイトの親類縁者の中で生き残っていた人たちを保護した。お母様、褒めてくれていいんだよ?
ざっと二十人ほど。サムエル・カイトを知らずとも、彼の親類と結婚した人、その子供などを含めると、総勢三十五人。ちょっとした集落くらいだね。みんな僕の領で仕事を手伝ってもらうことになった。
力仕事ができない子供や女性は僕の屋敷で雇うことにした。
え? なぜ良くしてくれるのかって?
――お母様がサムエル・カイトと愛し合っていたからです。きりっ。って言ってみたら、彼の幼少期の話をたくさん聞かせてくれた。
きっと、いつか封印から蘇り僕の日記をお母様が読むかもしれないので、あえて変えておこう。
サムエル・カイトの過去の様々な話だけど、ひ・み・つ!
――今日は雨。
僕は、リリー様なしでは生きられない。嗚呼、リリー様、君はどうしてリリー様なんだい?




