84「ルーシェルの日記です」①
僕の名前は、ルーシェル。
幼い頃から面倒を見てくれているメイドが日記でもつけたらどうかと言ってくれたので今日から始めようと思う。
――今日の天気は晴れ。
正直、お母様に関して僕は何も知らない。
噂はよく聞く。女にだらしない汚物のような父とは妥協して結婚したらしい。
息子目線でも、こんな男はないわーと思うくらいなので、よく妥協でも結婚したなと思う
……だからきっと、お母様が僕たちに会いにきてくれないのは父のせいだと思う。思っている。
――今日は曇り。
今日、お母様を見た。
相変わらずお美しい……とは特別思わないが、凛々しさはある。仲間に慕われている。さすがお母様だ。しかし、叔母さまと顔を合わせるとこれ見よがしにドヤ顔をするのは少しどうかと思う。
叔母さまも何に対してドヤ顔をされているのかわからないようで困惑気味だ。
お母様に代わり謝罪します。
――今日は雨。
メイドが、お母様が会いに来てくれないのならば、ご自身から会いに行けばいいのではないでしょうか、と提案してくれた。
……やるな、メイドめ。褒美に愛人に……あ、やめ、やめて! 顔はやめて! お願いします!
――今日は曇り
昨日は酷い目に遭った。メイドが膨れっ面になったのでご機嫌取りに忙しない日々を今日送っている。
アイリーンが「ざまぁ」と笑っていたので文句を言おうとしたら、その前に拳が飛んできた。
暴力系妹が将来結婚できるか不安だ。
――今日は晴れときどき曇り。
今日、お母様に一般の子供のふりをして近寄ってみた。あまりにも無防備だったので「よう姉ちゃんいいケツしてるな!」と言って、尻を叩いてみた。正直、鉄板かと思った。僕の手は折れて、泣いた。メイドに慰めてもらった。これを機に、僕は胸派になることを決めた。
――今日は晴れ。
やはりその辺の子供を装ってお母様の元へ。抱っこしてくれたが、絶壁だった。鎧を着ているのかなと思ったら着ていなかった。尻も胸も鉄板とは……軽く絶望した。アイリーンの未来は暗い。どんまい、と言ったら張り倒された。
――今日は曇りときどき晴れ、と見せかけて雨が振った。おのれ、天気め。
メイドを怒らせた罰として洗濯をさせられた。……僕、王子だよね? メイドは僕のベッドで寝ながら焼き菓子を食べている。僕、本当に王子だよね?
――今日は雨。
最近、昼間にお母様を見かけなくなった。戦いが忙しいらしい。
しょんぼりしていたら、メイドが母の部屋を教えてくれた。
お前、本当に使えるな。側室に……待って、可愛い子供の顔を容赦なく殴るのやめっ
――今日も雨。
昨日は酷い目にあった。あのメイドめ、昔、お姉ちゃんと慕っていた頃の僕の黒歴史を知っているからと強気だな。
今日、お母様の部屋にアイリーンと忍び込むことになった。
僕は、万が一見つかったら困ると思う。お母様は一度として会いにきてくれないのに、もし、僕たちが会いたがっているのだと知ったら嫌な顔をするのではないか、と。
アイリーンとメイドに相談したら、失笑された。こ、こいつら。
渋々ではあるが、アイリーンに腕を引かれてお母様の部屋に。妹を放置すると何をしでかすかわからないので、僕も結局ついていくことになってしまった。
――夜中の天気は不明。
ふふふ、甘いな、お母様。疲れて部屋に戻ってきたお母様がベッドで眠っている時、僕と妹はベッドの下にいたのだ。
戦場では鬼神の如き強さを振るうと言われているが、繊細さはないようだ。
明け方に、「人の気配がするんですけど」とあちらこちらを探していたが、最後までベッドの下を探すことはなかった。
僕たちの勝ちだ。
――今日は晴れ。世界が輝いて見える。
昨晩、お母様と一緒に眠ることができたので幸せだ。だが、メイドめ。何が変質者の素質がありますね、だ。お前が焚き付けたんじゃないか!
良い気分が台無しだ。
ちなみに今日の洗濯はかなりの出来だったと自負している。
――今日は晴れときどき曇り。
今日、お母様が何やら悩んでいるご様子だったので、一般人の子供を装って「どうしたのおばちゃん」と声をかけたら、羅刹の如くお怒りになった。
素振り千回は鬼だ。
なぜ怒ったのか、わからない。解せぬ。




