68「まだまだ続きます」②
初産ゆえやはり時間はかかったが、花蓮、水樹、フランの順番に子供が生まれた。
フランだけが特に時間がかかってしまい、息も絶え絶えとなってしまったが、身体には問題ないようでサムとデライトが抱き合って号泣してしまった。
「……サム、私、頑張った」
「うん、うん。頑張ったね。ありがとう、花蓮」
「問題ない。娘と一緒に稽古するのは夢だったから、叶って嬉しい」
体力があり余っている花蓮であっても、大きく疲弊しているようで声にいつもの元気がない。
仕方がないことだとわかっていながら、改めて出産の大変さを思い知った。
「……サム、名前は考えてくれた?」
「うん。花蓮と前に話をした時の候補から、木蓮様のお母様のお名前をお借りしようと決めたよ」
「――サム……ありがとう」
「お礼なんていいんだよ」
サムは花蓮の祖母紫・木蓮が抱く子に微笑んだ。
「初めまして、俺はサミュエル・シャイトです。君の名前は、純連・シャイトだよ」
木蓮が「ありがとう」と瞳を潤ませていた。
尊敬する木蓮の母の名を借りることができたこちらこそ「ありがとう」だ。
「サム殿、孫娘を、ひ孫をよろしくお願いしますね」
「――もちろんです」
サムは花蓮と木蓮、そして純連に力強く頷いた。
■
「ははは、サム。僕もこれでお母さんになれたね」
「ありがとう、水樹。無事に産んでくれてよかったよ」
「うん。想像していたよりも十倍大変だったけど、この子に会えたのなら何も辛くなかったよ」
水樹の声には、力強さを喜びがある。
生まれた子は水樹が抱き抱えている。
父親の蔵人と妹のことみが涙ぐみながら、姉が無事出産を終えたことと可愛い子供の姿に感動しているようだ。
「――サム殿、娘によくしていただきどうもありがとうございます。これからも、よろしくお願いします」
雨宮蔵人は立ち上がると、サムに深々と頭を下げた。
彼はかつてサムと戦ったことがある。仕方がないことではあったし、サム自身も戦いを楽しんでしまったので気にしていない。
そのため、蔵人はサムに負い目があり、剣聖の称号から退いている。
現在、剣聖である水樹がサムと結婚したのも、蔵人に対する牽制――要は人質としてである。
ただ、そう悲観するものではなく、互いに好意を持っていたので何も問題はなかった。
「もちろんです、お父さん。大事にします」
「……ありがとう、ありがとうございますっ」
隻腕の蔵人がまた頭を下げた。
サムは顔を上げてもらい、子供と向き合う。
「サム先生、お姉ちゃん、おめでとうございます!」
「ありがとう、ことみちゃん」
病弱だったことみは今はサムに魔法を習いながら剣術も学び、快活な少女となっている。
「お名前は決まっているんですか?」
「サム、どう? 決めてくれた?」
「うん。すっごく悩んだ」
いくつか候補は出ていたが、候補のふたつから絞れなかった。
「ほら、水樹と悩んだ時、ふたつの名前で悩んだでしょ」
「うん」
「その時に、いっそ両方つけちゃえばって言っていたのを思い出して」
「あ」
もしかして、と水樹が笑った。
「初めまして、俺はサミュエル・シャイト。君の名前は、イツキ・右京・シャイトだよ」
次回・フランさんです!
補足:純連はすみれと読みます!




