67「まだまだ続きます」①
可愛い子供たちとの出会いに感動しているサムの肩を、とんとん、とフランが叩いた。
振り返ると、少し顔色が悪い。
フランだけではない。
水樹、花蓮も同じだ。
「あのね、サム。とても大切な感動の場面を邪魔してしまうのは大変申し訳ないのだけど」
「フラン?」
「私たちも破水しちゃったみたい」
「――え!?」
サムだけではない。
子供を産んだばかりのアリシアとステラもギョッとする。
「僕たちも、出産の時間かも」
「タイミングが、よい、かも?」
水樹と花蓮が気まずい顔をしていた。
「ちょ、お医者様ぁあああああああああああああああああああああああ!?」
サムは部屋に医者がいるにも関わらず、大慌てして叫んでしまった。
しかし、サマンサとテイリーもサムの声に反応して泣くことはなかった。
きっと大物になるだろう。
■
そこからが大変だった。
個人の出産用として用意されていた部屋に急遽ベッドを持ち込んで出産となった。
カルミナはフランの父デライト・シナトラと、水樹の父雨宮蔵人を呼びに行き、ボーウッドは紫家に走った。
アリシアとステラに背中を押され、サムはフランたちの手を握り、声をかけることしかできない。
だが、問題があった。
医者が足りない。
紫・木蓮は、十二時間の出産に付きっきりであっても、現役時代に比べたら大したことがないと余裕があったが、医者は限界だった。
そこで代わりに来てくれたのが、出産に立ち会い子を取り上げた経験のある魔王ヴィヴィアン・クラクストンズこと日比谷白雪と、サムの祖母であるヘイゼル・アイル・スカイ、そしてティナ・ダニエルズだった。
「……いろいろお世話になったからね。お手伝いさせてもらうわ」
ここ数日、顔をあまり合わせることがなく、会っても少ししか会話が続かない白雪が少し照れたように言ってくれた。
「心強いよ、ありがとう」
「いいのよ。たくさん助けてもらったから、恩返しさせてね」
そう言って、白雪が手を念入りに洗って部屋の中に入った。
「サム、遅くなりましたが、おめでとうございます。何かと忙しいと思い落ち着いてからひ孫の顔を見にこようと思っていましたが、ふふふ、まさか私の出番があるとは思いませんでした。安心なさい」
「ありがとうございます、おばあちゃん! フラン、水樹、花蓮をお願いします!」
「ええ、お願いされました」
白雪に続き、祖母ヘイゼルが力強くそう言ってくれた。
祖母が気遣っていたことは知っていたので、このようなタイミングで来てもらうのは申し訳ないと同時に感謝しかない。
「サムお兄ちゃん、安心してくれ! 私は眷属たちの子供を取り上げたことは何度もあるぞ! 私の可愛い甥姪のために頑張るぞ!」
胸をどんっ、と叩いて頼りになることを言ってくれたのは、ティナ・ダニエルズだ。
魔王レプシー・ダニエルズの実妹であり、双子の兄レーム・ダニエルズと共に吸血鬼にして準魔王という存在だ。
何かと愉快な言動が多いが、その実力はサムが死にかけたほど。
今は兄と慕ってくれている彼女が経験豊富であることに感謝しかない。
「――ティナ、よろしくお願いします!」
「まかせろ! サムお兄ちゃんのためなら、たとえ溶岩の中だろうが深海だろうが余裕だ!」
ティナは鼻息荒く、部屋に入っていく。
行動を共にしているレームもこの場に来てくれていて、ティナに力強く頷いている。
――そして、長い出産が始まった。
出産ラッシュです!!




