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69「まだまだ続きます」③





「――フラン、大丈夫?」

「え、ええ、とても疲れてしまったけれど、平気よ。サムとの子供を無事に産めたのだからどうってことないわ」

「――ありがとう。本当にありがとう、フラン」

「ふふふ、どういたしまして」


 ベッドに横たわりながらも汗をびっしょりかいているフランは、優しげな顔をしている。

 普段は知的な彼女が、柔らかな母の表情を浮かべていた。


「私のことよりも、……お父様をなんとかしてくれないかしら。声を押し殺して泣いているのはいいのだけど、泣きっぱなしで身体の水分がなくなってしまうんじゃないかって心配になるのよ」


 苦笑するフランの視線の先には、静かに涙を流すデライトの姿があった。

 本当にずっと涙を流しているのだろう。襟や胸元が濡れている。


「……デライトさん、ハンカチ、どうぞ」

「すまねえ」


 ハンカチを受け取ったデライトは目元に押し当てた。


「いや、マジですまねえ。俺は、ロクでもない父親だったからフランにしなくていい苦労をこれでもかってかけちまった。サムと出会って、人生が良い方向に向かったと思っていたが、こうして孫と会えるなんて、俺は世界一の幸せ者だぜっ」


 ぶわっ、と再びデライトの瞳から涙が溢れる。

 デライトの苦労は知っている。

 本人から聞いたし、フランからも聞いた。

 スカイ王国最強の座を奪われ、酒に逃げ、妻にも逃げられた。仕事もなく借金もあった。

 フランが支えていなかったら死んでいたかもしれない。

 デライトは自分のせいでフランが婚期を逃したことを申し訳ないと思っていたし、良い縁談もないと思っていた。

 そんな時にサムと出会い、立ち直り、フランが結婚した。

 気づけば、王女レイチェルと再婚し、子供もできている。

 かつて最強の座にいた時など比べられない実力を得て、自分が井の中の蛙であったことを知った。

 死別してしまった愛弟子とも再会し、デライトの日々は活力を取り戻していった。


 そして、孫が生まれた。

 幸せそうな娘の姿も見ることができた。

 泣くに決まっている。


「――サム、フランを、孫を頼む。幸せにしてやってくれ」

「――もちろんです。絶対に幸せにします。でも、俺ばかりが幸せにされちゃっているので、頑張らないといけませんね!」

「ははは、俺もだ」

「もうっ、サムもお父様も! それよりも、サム、名前は決めてくれたの?」

「もちろん!」


 生まれた子は可愛い女の子だ。

 名前の候補はいくつかあったが、過去の偉人にあやかろうと思う。


「かつて、この国で最強の魔法使いの名を刻んだ女傑レオナ様よりお名前をお借りしようと思う」

「――素敵な名前ね」

「ああ、いい名前だ」


 サムはフランの腕の中にいる赤ちゃんを撫でた。


「初めまして、俺はサミュエル・シャイト。君の名前は、レオナ・シャイトだよ」


 サムの声に反応したのか、それとも偶然かレオナは手を振った。


「レオナ、イツキ、純連――生まれてきてくれてありがとう!」


 サミュエル・シャイトは六人の父親となった。





 ――サムの最初の子供たち六人がスカイ王国の長い歴史に名を残すのことになるのだが、それはまた別のお話。






 シリアス先輩(祝)「めでたい! めでたいぞ! 今日はシリアスなしでも許してやろう!」

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