66「宝さがしです」①
サミュエル・シャイトは、シューレン魔法国の王宮にいた。
「……貴族はもちろん、使用人もいない、か。普通は逃げちゃうよね」
悪徳貴族はエヴァンジェリンのブレスによって焼き尽くされた。
使用人たちの中にも灰になった人間もいるだろうが、ならなかった人間はさぞその光景が恐ろしかったはずだ。
「ふむ。可能性として、この機会に国外へ飛び出した者もいると思われるのである。探さなければならぬな」
クライド・アイル・スカイは、王宮の中を歩きながら顎に手を当てた。
「ですね」
「僕の転移を使って探してきます。すみませんが、この場は任せました」
「よろしく」
「任せてください。弟子ができたんですから、師匠として転移とは何かを見せつけましょう」
友也はそう言うと、音を立てずに消えた。
相変わらず、滑らかな転移だ。
呼吸のように自然に消える。
「うむ。弟子ができて喜ビンビンのようであるな!」
「…………そうですねー」
どんなビンビンだよ、とツッコンだ日には延々と説明がはじまりそうだったので、サムは口を噤んだ。
「それで? 今さら、もぬけの殻になった王宮にきてどうするって言うの? あ! わかった! 金銀財宝を奪うのね!」
「……綾音さぁん」
「冗談よ!」
瞳を輝かせていた綾音を見る限り、冗談ではなく本気で言っていただろう。
「この国に金銀財宝なんてないでしょう。貧しい国なんだから」
「そうだったわね」
「明らかに落ち込むなぁ」
食うに困らずとも、貧しい小国だ。
魔法こそすべての貴族たちが、まともな国の運営をしているわけがない。
民は生きるために必死で作物を育てるだろうが、搾取されていく。
そんな国に無駄と言える財宝があるはずがない。
「――なんというか、申し訳ないのだが、金銀財宝はある」
「あるの!?」
グライン・シューレンが、気まずそうに言った。
まさか金銀財宝があるとは思わず、サムだけではなくみんなが目を剥く。
視線を集めたグラインは、恥じるように言葉を続けた。
「情けない話だが、この国の王も貴族も民のことなど気にしていない。私腹を肥やすことしか考えていないのだ」
「……あのおっさんを見れば、仕方がないって思うよ」
実際、サムは魔法王を名乗るシューレン魔法国の王、ルルカス・シューレンと戦っている。
ルルカスの言動は、王ではなかった。
「うーん」
「綾音さん、どうしたの?」
「金銀財宝があるのはいいんだけど、あのキモいおっさんの趣味ってめちゃくちゃ悪そうだから、悪趣味な財宝が出てきても嫌だなって」
「ありそう。自分の銅像とか建ててそう!」
「うわぁ、いらねぇ!」
綾音とサムが笑う。
クライドたちも苦笑してしまった。
「……いや、なんというか、本当に予想通りの悪趣味で申し訳ない」
なぜかグラインが謝罪した。
サムたちは、もしや、と思った。
「――銅像あるの!?」
「――金の像がある」
「趣味悪すぎ!」
魔法王は本当にわかりやすい悪趣味を持つ王だった。




