間話「未来での評価です?」
――転移術師アマリア・ショーン。
スカイ王国の歴史を紐解いても、彼女ほど苦労した人間はいないと断言できる。
彼女の生まれは、シューレン魔法国という魔力を持たぬ者が人として扱われない国だった。アマリアはそんな国に魔力を持たない子として生まれ、非道な扱いを受けた。
幼少期に奴隷として過ごした日々は、察するに余りある。
そんな彼女を救ったのが、スカイ王国史を学べば必ず名前が出てくるサミュエル・シャイトだった。
そう。あのサミュエル・シャイトだ。
小さな田舎の男爵家に生まれながら、実は王子の子供だったという設定盛り盛りのハーレム魔王だ。
彼の逸話は多く、荒唐無稽の話まであるが、夜の魔王であることは事実だったらしい。夜の魔王と響きは良いが、要は、ベッドの上で強かったらしい。
その証拠とばかりに、彼の妻であるリーゼロッテ・ウォーカー・シャイトの手記には「こ、腰がやばい」と書かれている。
それはさておくとして、話題に尽きないサミュエルによって、アマリアは救われた。
運命の出会いだったと言っても過言ではない。
アマリアは奴隷の身分から助けられると、転移能力を持っていることが判明した。
その能力を見抜いた、最凶の魔王遠藤友也によって、弟子として迎えられたのだ。
彼女は転移を学び、実践し、お約束のようにラッキースケベを受けた。
仕方がない。代々ラッキースケベを輩出する遠藤家の祖を師匠にしたのだ。ラッキースケベだけでよく済んだ、と言える。
アマリアの能力は開花し、幼いながら実戦にも加わり、サミュエルの危機をいくつも救ったという。
またスカイ王国最強の女傑ウルリーケ・ウォーカー・ファレル・シャイトから可愛がられ、戦いを叩き込まれたようだ。
ウルリーケの過酷な訓練によって、魔力を持たずとも魔法を使う手段を考えついた現代魔術の母こそ、アマリアだった。
当時のアマリアの日記にはこう書かれている。「――まほうつかえないとしぬ」と。
他にも、愛の女神エヴァンジェリン・アラヒー、魔法学園理事長日比谷綾音、賢者クリー・イグナーツからも可愛がられ、多くの技術を学んだと言う。
現在、世界には魔法と魔術が溢れているが、魔術をこれほど発展させ、生活を豊かにさせたのは間違いなくアマリア・ショーンの功績である。
そんなアマリアだったが、当時からスカイ王国で一番苦労している人物だったと有名だった。
ラッキースケベ大魔王と名高い遠藤友也の唯一の弟子であるということから、苦労したことは想像に容易い。
師匠の被害者に、師匠と一緒に頭を下げて回ったという逸話もある。
遠藤友也が引退した後も、彼の子供たちの面倒を見ながら振り回された。シャイト家の子供たちからも姉として慕われ、スカイ王国からの覚えもよく、勉強家だったアマリアに勉強を教えてもらったことをきっかけに大成した子供たちもいる。
ただ、頑張り屋で真面目な子だったことから、いつも何かしらの出来事に巻き込まれ、大変な目遭っていたという。
もしかしたら巻き込まれ体質だったのでは、と考えている者もいた。
彼女の日記には、「え? 創作?」と思ってしまうような出来事がたくさん書かれ、一部、劇にもなっている。
すべてを書くには逸話が多すぎるアマリアであるが、賢王クライド・アイル・スカイが継承魔法で自身の力の全てを授けた人物であることから、スカイ王国での信頼度がわかるだろう。
この時、賢王はきっとアマリアが未来を豊かにする姿が見えていた説がある。私も、賢王ならば、ありえると信じていた。
この時の継承魔法によって、魔力と結界術を手に入れたアマリアだったが、彼女は魔力がなくとも魔法を使える手段を模索し続けた。魔力を得て魔法を使えるようになったからこそ、「魔術」に辿り着いたともいえる。
そう言う意味では、やはり賢王クライドは未来が見えていたのだろう。
また、賢王クライドの後継者であるセドリック・アイル・スカイは、父王の力を継承できなかったことを気にしなかった懐の深さを見せた。セドリックとアマリアは立場こそ違ったが、良き友人であったとされる。
目立つことは少なかったが、良き王であったセドリックもまたアマリアの才能を見抜いていたのだろう。
最後に、スカイ王国一番の結界術師にして、大陸一の愛妻家であり、家庭を守る守護者と名高いギュンター・イグナーツは、晩年、アマリアに孫、ひ孫のことを託した。
結界術を賢王から継承したアマリアを最高の結界術師に導いた、もうひとりの師匠である。
転移の師匠である遠藤友也に続き、良き師匠としてアマリアを育てたギュンターの功績は大きい。
その後、アマリアは、ギュンターのひ孫であり、サミュエルのひ孫でもあるとある少年を結界術師として導いた。
その少年は、後に結界王と名高く、何十年とスカイ王国を敵意から守り続けた偉大な人物となる。
アマリア・ショーンは、人間の可能性を示した人物である。
彼女がいなければ、スカイ王国の発展はしなかっただろう。
今日も私は、先祖にして尊敬するアマリアのことを調べ続ける。
彼女のすべてを知りたい、そんな欲求が私を突き動かす。
魔力を持たず、大した才能がない私を遠い先祖のアマリアの存在が導いてくれた。
――ありがとう。
サマンサ・ショーン著「スカイ王国とビンビンとラッキースケベ」から抜粋。




