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1981/2202

65「ラッキースケベおじさんの勧誘です」②





「ご、ごめんなさい。もう殴らないでください」


 いたいけな少女を怯えさせた罰として、縛られた友也は綾音、エヴァンジェリン、ゾーイから一発ずつ拳を顔面に喰らった。

 鼻血を出す友也だが、まだ余裕はありそうだ。


「んで、マジでこの子をどうするつもりだ? 返答によってはこの場にいる全員が敵になると思ってね」

「……み、味方がいない! ふっ、所詮は魔王なんてこんなものです。孤独な魔王なのですね」

「違うよ、言動のせいだからね?」


 ニヒルな表情を浮かべる友也だが、自業自得である。


「彼女を弟子にしたい」

「それはラッキースケベ的なことか!」

「違いますよ! 転移のいろはを教えてあげたいのです!」

「それでラッキースケベするんだろう!」

「……可能性は否定できません」

「綾音さん、エヴァンジェリンさん、ゾーイさん、お願いします」

「待って待って待って! 僕ですよ! ラッキースケベしないわけがないじゃないですか!」

「開き直るんじゃないわよ!」

「あべし!」


 綾音が平手打ちをした。

 しかし、友也は今回ばかりは折れない。


「ラッキースケベは転移を学ぶ代償だと思ってください! 僕だってしたくてするわけじゃないんですから!」

「……なんであんたが選ぶ側なのよ?」


 指を鳴らす綾音に、友也が叫んだ。


「そもそも! 興味のないおっさんとかにラッキースケベする僕の気持ちがわかるんですか! どこがラッキースケベだよ!?」

「そ、そうね、ごめんなさい。今度お酒奢るから、な、泣かないでね」

「泣いてません!」

「めっちゃ涙流れているから」


 かわいそうになったのか、綾音はハンカチを取り出しごしごしと友也の顔を拭く。


「見たところ、彼女には魔力がありません。そのせいでこの国では不遇な扱いだったのでしょうが、本来ならば優遇されるべき能力です」


 友也の言う通りだった。

 シューレン魔法国では、魔力の有無が全てだ。

 しかし、魔力があり魔法が使えても、「それだけ」の人間が多かった。

 むしろ、おかしな選民思想を植え付けられ、弱者を虐げる者ばかりだ。

 そんな魔法使いたちが、転移能力という便利な力を持つ少女を見つけたら、どうしただろうか。

 使い潰されるか、なかったことにされるか。どちらにせよ酷い扱いを受けただろう。


「僕とカルの転移に優劣はありません。つまり、そちらの彼女の転移も僕たちと変わらないでしょう。ならば、彼女は大事に育てるべきだ。利用されないように守り、自立できるように指導すべきだ」


 友也は続けた。


「よく聞いてください、お嬢さん。僕は、君の中に眠る力と同じ物を持っている。その力があれば、君の人生は大きく変わる。もちろん、良いものにです。お金も稼げます。美味しい食事もできます。暖かな家も得ることができます」


 アマリアが息を呑んだ。

 幼くも、友也の言葉の意味を理解しているようだ。


「弟子になれば、生活を保障しましょう。もちろん、ご家族もです。望むのであれば、あなたの友人も僕が保護しましょう。この国を出て、スカイ王国に連れて行きます。学校にも行かせましょう。君に、僕の力の全てを授けましょう」


 友也は力任せに、身を拘束する縄を引きちぎる。


「今、君には大きな転機が訪れています。このチャンスをモノにするのかどうか、それは君次第です。もしかしたら、後悔するかもしれません。それでも、やって後悔するのとやらずに後悔するのは違う。まったく違う」


 友也は少女に手を差し出した。


「僕の弟子になりなさい。君は、君の力で、まっとうな人生を手に入れるのです」


 アマリアは友也の瞳をじいっと見ていた。

 お互いに逸らすことはしない。

 しばらくして、アマリアが友也の手をそっと握りしめた。


「よろしく、お願い、します」

「――あなたの決断に、心からの敬意を」






 ――これが、後にスカイ王国で一番苦労した転移術師アマリアの始まりだった。







 シリアス先輩「まあ、師匠がラッキースケベおじさんだと苦労はするよね! シリアスだぁああああああああああああああああああああああああ!」


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挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


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