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間話「赤金茜のこれからです」③





「いいんですか?」


 薫子の申し出は茜にとってありがたいことだった。

 知り合いのいない、しかも異世界で働くということはリスクが大きい。

 薫子のお店ならば、彼女を信頼しているので安心して働ける。


「もちろん。あ、でも、ここの食堂で働くこともできるわよ。混雑する時間はどっちも大変だけどね」


 薫子は料理が好きで、将来自分の店を持つことが夢だったという。

 異世界に召喚されて、夢を目指すどころではなくなってしまったが、巡り巡って夢を叶えることができた。


 ただ薫子としては、若干の葛藤もあるらしい。

 修行をしたわけではない料理人とも言えない自分が、料理を振る舞っていいのか、と。

 それでも、薫子の料理を美味しいと褒めてくれて、また食べたいと言ってくれる人たちのために、料理を続けることを決意したのだという。


「ちなみに、お料理は得意?」

「洋食はあまり、でも和食はおばあちゃんのお手伝いをしていたので得意です」

「――採用! 茜さんのような人材を待っていました!」

「展開早いよ!」


 薫子の喜びように茜が目を丸くする。

 聞けば、薫子はどちらかというと洋食が得意らしい。

 中華、和食も作るし、好きだが、家族が洋食が好きだったのでちょっと傾いているようだ。

 それでも、一般的な和食も中華もだいたい作れるので、普段から料理が好きでやっていたのだと茜はすぐにわかった。


「洋食は、こっちの世界でも似たようなものがあるけど、和食や、特に中華はみんな知らないみたいで。一応、日本のような国があって食材は手に入るんだけど、食べてくれる人がまだおっかなびっくりなのよね」

「あー、異世界あるあるなんですねー」

「そうそう。でも、サムくんや友也くんがたくさん食べてくれるから、じゃあ、って他の方も食べてくれてね。少しずつ、注文が増えたのよね。そこで、茜さんの出番よ!」


 きらん、と薫子の目が光った。

 人材を逃す気はないのだろう。


「おや、お話中でしたか」

「ご歓談中に申し訳ありません」


 そんなとき、カリアン・ショーンとモンド・ムンドが和談室に入ってきた。

 薫子と茜が立ち上がり、お辞儀をする。


「カリアン様、モンド様、御休憩ですか?」

「お邪魔しています!」


 新聖ディザイア国の枢機卿であった二人は、現在スカイ王国に身を寄せて、女神エヴァンジェリンのもとで神父として働く日々だ。

 枢機卿であった経験から、神殿のまとめ役であり、女神エヴァンジェリンの側近でもある二人の信頼は厚い。


「ご丁寧にありがとうございます。はい。休憩に入らせていただきたいのですが、その、ご一緒してもよろしいですか?」


 物腰柔らかくそう言うカリアンの申し出を断る理由はない。


「もちろんです。どうぞ。あ、よろしければ私がお茶を淹れますね」

「しかし」

「お疲れなんですから、カリアン様もモンド様も座っていてください」


 薫子がお茶の支度を始めると、二人は感謝の言葉を述べて椅子に座る。


「聞き耳を立てるつもりはなかったのですが」


 カリアンが言い辛そうに茜に声をかけた。


「お仕事を探しているようですね」

「はい」

「何事も経験です。薫子さんのお店で働くことも良いことです。他に選択肢が欲しければ、神殿や教会でもお仕事はたくさんあるのでいつでもご紹介しますよ」

「ありがとうございます」

「もう、カリアン様ったら、茜さんは私の店の料理人に決定なんですから!」

「それはそれは失礼いたしました。今度、モンド殿と一緒に伺わせていただきますので、その時はよろしくお願いします」

「楽しみにしております」

「いっぱいサービスしますので楽しみにしていてくださいね!」


 カリアンとモンドと親しげに会話する薫子を見て、茜も早くこの国に慣れたいと思うのだった。






 茜さんは頑張ります!



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