90「友也がこっそり動いていました」③
「オークニー王国は僕にとって取るに足りない国だ。しかし、やりすぎたな」
友也の手は勢い余ってリチャードのブラウスを破いてしまう。
彼の胸板が露出した。
「わ、私にどうしろと言うのですか?」
「話が早いようでよかった。ここでくだらないことを言っていたら首を引きちぎっていたところだ」
友也の怒りの宿る声に、リチャードは身を小さくしている。
いくら友也が成人前の子供に見えても、魔王であることは変わらない。
リチャードは己が戦闘者でないことを承知している。王であるため、強さを求められていないのも理解している。
ゆえに、目の前の魔王が怖い。
王として、魔王と毅然と言葉を交わす勇気は、リチャードにはなかった。
「まず、霧島薫子に関してもう関わるな」
「承知しました」
「僕は優しいのでもっと噛み砕いて言ってやろう。霧島薫子に対し、今までよからぬことを企んだ者を殺せ」
「……そ、それは」
「安心していい。リチャード王、お前の政治的に敵対している相手だ。なんなら、僕の名前も使わせてやる。僕が殺してもいいが、無能なお前が責任を持って対処すべきだ。違うか?」
「……わかりました。関係者を処罰し、二度と霧島薫子殿に手を出しません」
「よろしい」
友也は作り笑いを浮かべて椅子に戻ると、足を組む。
「では、次の話をしよう」
「勇者召喚に関して、ですね」
「その通りだ。要求はもうわかるな?」
「はい。関係者をきちんと処罰し、勇者召喚に関しての技術はすべて破棄します。この私の責任として、すべて!」
「素晴らしい。僕に言われる前に、それらができていれば百点だったが、安心していい。まだ挽回できる。君は悪い王ではないようだ。そんな君に、僕から友好的なプレゼントをあげよう」
友也は、視界の端で怯えている貴族のひとりを指さした。
「彼とその仲間がスノーデン王国と通じ、勇者召喚技術を流した元凶だ」
「――な」
「彼はね、実に大きな夢を持つ男だね。勇者を召喚した暁に、スノーデン王国の貴族をオークニー王国に迎え入れることを条件に、勇者を使い、リチャード王とその家族を全て殺した上で、自分の息子を王にしようと企んでいた」
「…………馬鹿な」
老貴族は反論もなにもなくガクガクと震えている。
リチャード国王と、ふたりの貴族は信じられないと、震える貴族を見ていた。




