89「友也がこっそり動いていました」②
リチャード・オークニー国王は、まだ三十と若く経験も浅い。
臣下たちに支えられているが、王としては善良だった。
リチャードは、目の前に現れた詰襟の少年が魔王を名乗ったことに、唾を飲む。
「……魔王遠藤友也様……スカイ王国に滞在している魔王様のお名前と同じですね」
「よくご存知ですね。――本人です」
「――っ」
執務机から離れ跪こうとしたリチャードを、友也は制した。
「あなたに跪いていただく必要はありません。どうぞ、お立ちください」
王の執務室には、三人の初老の貴族がいる。
リチャードをサポートする役目なのだろうとわかる。
その三人も、魔王遠藤友也の登場に、両膝をつけてひれ伏している。
「突然の訪問、すみません。この国に伝手がなく。また、礼を尽くす必要もないかと思ったので、こうして来させていただきました」
「……は、はい」
「座って話をしたいのですが、そちらの椅子をお借りしても?」
「もちろんです。どうぞ!」
「では、お言葉に甘えますね。リチャード王もおすわりください」
「は、はい」
「そこの君たちも、椅子へどうぞ」
「――はっ」
貴族と王を椅子に戻らすと、友也は椅子に座り足を組んだ。
サムたちには見せない、魔王らしい振る舞いしていた。
「さて、今日訪問したのは、この国をどうしようと考えているからです」
友也の言葉に、リチャードがわからない、と尋ねる。
「ま、魔王様、どのような意味でしょうか?」
「おっと、申し訳ない。つい遠回しに言ってしまいましたね。では、はっきりと言いましょう。滅ぼそうかどうしようかと悩んでいるのですよ」
「…………な」
唖然とするリチャードたちに友也は淡々と続けた。
「正直、僕としては怒りの感情に任せてこの国を更地にしたいのですが、そういうことをすると怒る友人がいますので……」
「お、お待ちください!」
「はい?」
「な、なぜ、我がオークニー王国をそのように!」
「……その質問を王がするような国なので、滅ぼしたいんですよ」
友也が威圧を込めると、リチャードたちが口を開けたまま青い顔をする。
「愚かな人間を召喚し、好き勝手させた前王から玉座を奪い、王となったことは認めましょう。良き王として頑張っていることも認めます。――しかし、オークニー王国は逃げられた聖女霧島薫子を今も取り戻そうとしている!」
「……な」
「誘拐の計画、彼女の周囲へのスパイ行為、そして取り戻せないのなら殺してしまおうという企みを僕が知らないとでも?」
「お、お待ちください! そのようなこと、私はまるで身に覚えが!」
弁明するリチャードに、笑みを浮かべていた友也が立ち上がると、胸ぐらを掴んだ。
「王が把握していないのが問題だと言ってんだよ?」
「そ、それは」
「言っておくが、彼女は僕のかけがえのない友人だ。お前たちが喧嘩を売ったサミュエル・シャイトの友人でもある。意味がわかるか?」
「…………はい」
「だが、これだけなら、まだ滅ぼそうなどとは思わなかったよ。お前らの間者などすべて排除している。よくも飽きもせず送り込んでくると関心さえしているよ。しかし、許せないことがある」
「ま、まだなにが」
「勇者召喚を可能とする技術をスノーデン王国の腐った貴族に流したな?」
「――な」
リチャードは友也の言葉に、信じられないと目を見開いた。




