91「友也がこっそり動いていました」④
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「カートゥン侯爵! 貴様という奴は!」
震える老貴族――カートゥン侯爵を、左右にいた老貴族が押さえかかった。
「ち、違う! わしはそのようなことを考えていない! 簒奪など、そのようなことは!」
「魔王遠藤友也様、本人はこう言っていますが、証拠はあるのでしょうか?」
リチャードは、友也を疑っているわけではないが、魔王の言葉ひとつで臣下を簡単に切り捨てることはできないようだ。
「ふむ。そうですね、彼と通じていたスノーデン王国の貴族は死んでしまいましたし、さてはて、どうしようかな」
「ま、魔王様! あなたは誤解しているようだ! わしは、長年オークニー王国のことだけを考えてきました! そんな私が、王を殺そうとするなど――」
「そうそう! 霧島薫子を狙った暗殺者がそちらの侯爵の子飼いでしてね、いくつか質問をしたところ気持ちよくお答えくださいましたよ」
「――な」
「今まで指示された証拠もすべて差し出してもらいました。他にも、今まで侯爵の命で殺した人間のリストまでもらっていしまいましたよ」
「暗殺者風情が、わしを貶めるためにそのようなことを言ったのです! どうか、どうか!」
カートゥン侯爵は、外見だけなら孫よりも幼い友也にひれ伏し、額を床に擦り付ける。
友也が言葉を重ねるたびに、自分の立場が悪くなっていることを理解しているのだ。
だが、力づくで止めることはできない。
ゆえに、頭を下げる。
「しかし……あなたの息子が娼館で「俺は王になることが決まった」と豪語していると聞いている者もいますし、さてはて、どうしましょうか?」
「……っ」
「僕としては、別にいいんですよ。証拠がないと言い張るのも、王位を簒奪する気は無いと言うのも。別に、リチャード王の代わりにお前の無能な息子が王になろうと、興味も関心もない。しかし、スノーデン王国にしたことのけじめはつけてもらう」
「わ、わしになにをしろと」
「あなた個人ではない。僕は先ほど言ったように、この国を滅ぼす」
「あ、あまりにも横暴な! いくら魔王であっても、やっていいこととわるいことが!」
唾を飛ばす老人に、友也は感情を消して視線をそっと合わせた。
「ならば、僕を殺しにくればいい。悪い魔王を倒すために、勇者を召喚すればいい。僕は隠れることなく、戦おう」
「――ひ」
友也は老人と視線を外すと、リチャードに向き直る。
「さて、侯爵はこうおっしゃっていますが、どうしますか? 宣戦布告しますか?」
「――いいえ、そんなことはしません」
「リチャード陛下!」
「だが、時間をください。私自ら調べます。カートゥン侯爵が魔王様のおっしゃるようなことをしていれば――」
「どうぞ、証拠です」
友也はリチャードの前に、紙の束を投げた。
「茶番をしてしまい申し訳ない。証拠が揃っていないわけがないじゃないですか。残念です。侯爵が認めてくれさえいれば、処罰を軽く求めようと思っていたのですが」
老人が口をぱくぱくさせるが、言葉は出てこないようだ。
「魔王の怒りを買いたくなければ、この哀れな愚者を殺せ」
「……かしこまりました」
「陛下! 陛下! 陛下!」
「……連れて行け」
リチャードの命令に、カートゥン侯爵が引き摺られていく。
「ふむ。あなたは良き王だ。個人的には好ましいですよ」
「ありがとうございます。それで――」
リチャードが何かを言おうとしたとき、大地が揺れた。
「こ、これは」
「なにが」
リチャードが倒れ、続いて友也が倒れた。
リチャードの股の間に友也の顔が挟まるが、その間も地面は大きく揺れている。
「……もがもが……ぶはっ、おえっ、これは何が起きている? 違う、何かが動いている!」
リチャードの股間から耳を研ぎ澄ませた友也には、遠い場所で巨大な何かが動いていることを察知した。




