間話「ジュラ公爵は疼くそうです」①
オフェーリア・ジュラは、実家のジュラ公爵家でのんびりお茶を飲んでいた。
先日、妹が「少々やらかして」しまったことから帰宅したのだが、その後、母とシャイト伯爵領の運営に関しての相談をしていたら、思いの外盛り上がってしまっていた。
不在の伯爵領は、協力的な町長をはじめ顔役に任せてある。
とはいえ、基本的に民は変わらぬ生活をお願いしている。
オフェーリアは、新たな民の受け入れ、蒸留所の建設、水質調査、まだ把握していない小さな村との交渉などが仕事だ。
少しくらい不在にしても問題ないように、指示をしてある。
「はあ。王都は寒いですわ。シャイト伯爵領は南にあるので、雪こそふりますが、まだ暖かいですから、あちらの方が過ごしやすいですわね」
オフェーリアは寒いのが苦手だ。
そのため、冬の間は伯爵領にこもっていようと思ったが、母の要請や、サムたちとの交流もあるので、王都に戻ってこなければならない。
これが一般的な貴族ならば、馬車で移動するしか手段がないので、季節の変わり目に領地を移動して、しばらく滞在を繰り返さなければならないのだが、ありがたいことに転移の使い手が二人もいる。
さすがにオフェーリアも魔王遠藤友也に気軽に転移したいとお願いはできないが、カルミナ・イーラは気安く、普段から接点が多いため、気軽にお願いができた。
カルミナは準魔王であり、魔王白雪とともに女神日比谷綾音の復活阻止、復活後の殺害を計画しており、裏で動いていたのだが、その計画も予期せぬ形とで頓挫したため、新たな日々を送っている。
生活するには金が必要であるのは、人間も魔族も変わらないということで、カルミナ・イーラはオフェーリアと契約していた。
契約内容は、定期的に転移によって王都と伯爵領を行き来すること。
契約金は、結構な値段だ。
馬車での移動時間を考えると、カルミナの転移は大枚を叩いても惜しくない。
できれば専属で付きっきりでいてほしいが、カルミナは複数の契約を早々に取っているので、独占は残念ながらできなかった。
ただ、オフェーリアと親しいカルミナは優先的に転移してくれると約束をしてくれている。
「そろそろカルさんが迎えにきてくれる時間ですが」
ウォーカー伯爵家に伺う予定なので、オフェーリアはカル待ちだった。
先日、ゾーイがサムと街中デートをしていたことは街の人たちや、公爵家の「影」から聞き及んでいる。
争うつもりは毛頭もないが、オフェーリアもサムにデートのおねだりをしようと考えている。
きっとサムは少し恥ずかしそうな顔をしながら受け入れてくれるだろう。
少し楽しみだ。
「――あら。オフェーリア、まだいたのね」
「お母様。どうかしましたの?」
派手さのないシンプルな洋服を身につけた、母イーディスはなにやらそわそわしているように見えた。
こんな母を見るのは初めてだ。
好奇心を覚えて尋ねたオフェーリアに、イーディスは神妙な顔をして答えた。
「――私のわからせが疼くわ」
「意味がわかりませんわ!」
聞かなければよかった、とオフェーリアは肩を落とした。




