84「サムと商人です」②
「オーネィ・ショ・タスキーです」
「はい。おねショタ好きさん!」
「………………」
「………………」
サムが握手に応じると、オーネィは何とも言えない顔をしていた。
はて、とサムが首を傾げる。
いきなり「おねショタ好き」であることを告白されてびっくりしたが、ここはスカイ王国だ。
そのくらいの趣味では動じることはない。
サムとリーゼたちも、属性として「おねショタ」扱いされることもあるので、忌避はない。
ただし、目の前の少年はサムよりも幼く、彼の背後に控える――おそらく恋人だろうか。彼女たちは二十代半ばだ。
サムとリーゼの年齢差以上のおねショタである。
この場にクライドがいれば「うむ。よきおねショタである!」と大満足しただろう。
「……サム。なにか誤解しているようだから、言っておくが……こちらの方は、オーネィさんだ」
「お姉さん?」
「オーネィって名前なんだよ!」
「ああっ、オーネィさんですね! って、オーネィ・ショ・タスキーって名前すご! こんな偶然ってある!? あ、すみません! 決して馬鹿にするわけでは」
サムは慌てた。
名前を間違えた挙句、「おねショタ好き」扱いしてしまったのだ。
頭を下げて謝罪するサムに、オーネィは「顔をあげてください」と、怒気を含まぬ優しい声をかけてくれた。
「――さすがサミュエル・シャイト様です」
「へ?」
「以前から、あなたは僕の同志だと思っていたのです」
「んんん?」
「ウルリーケ様のお弟子であり、リーゼ様をはじめ魅力的な年上の女性と結婚なさいましたね。ぴん、ときていました」
「あの、どういう?」
「しかも、僕の名前を聞き、おねショタ好きと理解した! これは素晴らしいことです!」
「えっと、あの、えぇ?」
なぜ「おねショタ好き」でそんなに感動しているのかサムには理解できない。
しかし、オーネィは瞳に涙を浮かべているし、後ろに控える女性たちもハンカチを目元に当てて喜んでいる。
――意味がわからない。
「僕の一族は、代々おねショタ好きを生業としてきました」
「どんな一族!?」
「代々、当主はおねショタ趣味でなければなりません」
「だから、なんで!?」
「初代国王様が、僕の先祖の趣味嗜好を受け入れてくださり、そのときに「おねショタ」と名付けてくれたそうです」
「まーたー初代だー!」
日本人がこの世界に召喚されてレプシーを倒し、封じ、スカイ王国を興したのはいいのだが、魔法少女をはじめちょいちょいこの世界に余計な者を残している。
まさか「おねショタ」まで伝えているとは思わなかった。
「僕の一族にはひとつの決まりがあります。――おねショタを理解できる者は永遠の友にすべし、と」
「えぇ……」
どうしよう、この展開、とサムはデライトたちに視線を向ける。
だが、グレゴリーをはじめ、「おねショタ」がわからず、みんな不思議そうな顔をしている。
唯一、デライトだけが苦い顔をして、サムに衝撃発言をした。
「オーネィはショタを自称していやがるが、こいつは六十を超えたジジィだ。エヴァンジェリン様の呪いによって子供になってるだけだからな」
「――ひゅっ」
サムの喉から変な声が出た。




