82「商人の提案です」②
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「オーネィ様、言いにくいのですが、すでにエヴァンジェリン・アラヒー様の神殿はスノーデン王国に建てられることになっていますよ?」
「――おや?」
「へん――ギュンターがグレゴリー様と交渉し、決まっています」
野望を語るオーネィにエリカは、彼の目的がひとつすでに叶っているとこを教える。
すると、オーネィは満足そうに頷いた。
「さすが聖人ギュンター・イグナーツ様ですね。僕などでは足元にも及ばない。何歩も先にいます。自身の力不足をただただ恥じるだけです」
「……ギュンターの評価が高くて戸惑うんですけど」
エリカの言葉に、デライトとボーウッドは「うんうん」と頷き、同意した。
ヴァルザードは首を傾げて、エリカの言葉の意味がわからないようだ。
彼に取ってギュンター・イグナーツは良き兄のような存在なので、エリカの評価の低さが逆にわからないらしい。
「俺としては、反対はしねえが奴隷を使うっていうのは悩ましいな」
「言いたくありませんが、奴隷に身を落とさなければ生きていけない者もいるのです」
「わかっちゃいるが」
飢えて死ぬよりも、奴隷であったほうがマシだと思う場合もある。
奴隷も必ずしも主人が悪徳とは限らない。
人として扱われることもある。
スカイ王国に、ハイト・マルディラ伯爵がいる。
彼は少年奴隷を抱える貴族であったが、奴隷に教育を施し、愛を持って育てていた。
肉体関係はあったが、奴隷たちはハイトを慕っていたので問題はなかった。
ギュンター・イグナーツによって女体化させられたマルディラ伯爵は、奴隷たちを解放し、立場は使用人として、実質愛人として愛を育んでいる。
スカイ王国なので他国ではあまりない例ではあるが、奴隷たちが幸せになる可能性もあるのだ。
実際、人殺しをはじめ重罪を犯した者は犯罪奴隷としてまず解放されることはない。
いくらスノーデン王国に人手が足りずとも、オーネィは犯罪奴隷まで連れてこようとは思っていない。
「できましたら、冒険者も積極的に受け入れていただきたいと思っています」
「おいおい。冒険者を悪くいいたいわけじゃねえが、揉め事が増えるんじゃねえか?」
「そこは事前契約でしっかりさせていただきたいです」
「……荒くれ者どもが納得すりゃいいがな」
「そこは、させます、ので問題ないですよ」
笑顔で言い切ったオーネィにデライトの顔が引き攣る。
商人はこういうところが怖い。
「冒険者も、金を稼いで貴族のような生活をする者から、日々食べることに頭をかかえる冒険者がいます。そこに、スノーデン王国に冒険者を集め、開拓とモンスター討伐に貢献した者を民として迎え入れるのはどうでしょうか?」
「住まわせてやれってことか?」
「そうです。気に入った者がいれば、兵士や騎士に取り立ててあげてください、とグレゴリー様にお願いしたく」
悪い案ではない。
定住したい冒険者は山のようにいる。
名の売れた実力者は、早々に貴族のおかかえになったり、商人と専属契約を結ぶことで、土地を融通してもらい、腰を据えることができる。
スノーデン王国は過酷な国だが、これから伸び代のある国ではある。
獣人たちがすでに民になるため集まっている。
魔王たちの援助もある。
一番、好条件が出されるのは今だけだ。
「……クライド陛下と相談させていただくが、我個人としてはオーネィ殿の提案を受け入れたい」
「さすがグレゴリー様。お話が早くて助かります」
「だが、人選だけは頼む。ボーウッド殿の関係者である獣人たちは早々に我が国に移住して復興を手伝ってくれると約束してくれた。我は、まず彼らに報いたい。ゆえに、獣人を敵視しないもの、仲間として共に生きることができる者をお願いしたい」
グレゴリーの願いを受け、彼の背後に立つボーウッドをオーネィは見た。
獅子族の獣人ボーウッドはその雄々しい顔をオーネィに向けて、力強く頷く。
「……なるほど。僕の情報不足でした。奴隷はもちろん、冒険者の選別を厳しく行わせていただきます」
「感謝する」
とりあえず、話はまとまった。
デライトが肩の力を抜き、背もたれに背中を預けたとき、
「ちょ、あ、グレゴリー様! ここにいた! あの! 移住者っていうか、守護者っていうかよくわかんないけど素敵な住人希望を見つけたので、ぜひ受け入れてください!
息を切らしたサムが部屋の中に飛び込んできた。
実は、オーネィ・ショ・タスキー氏は、由緒正しいおねショタの家系です。




