53「綾音とメイの友情です」①
「女神様……お魚美味しかったです」
「ふん。私が釣って料理したんだから当たり前よ。しっかし、魚の捌き方もわからないなんて」
「……神聖ディザイア国は貧しいので、魚は骨ごと食べていました」
「なんかごめんね!」
魚を捌いて骨を取るどころか、食べるものが少ないので骨までちゃんと食べていたというメイ・リー・リーに綾音は反射的に謝ってしまった。
細身の割にはたくさん食べるメイと、力を取り戻すために食べる綾音のふたりで、一メートルを超える主はすべて食い尽くされてしまった。
「明日は、質よりも量で勝負ね。あ、小屋も快適に改造していかないと」
綾音は、すっかりこの小屋での生活を続けるつもりだった。
思えば、異世界に勇者として召喚されてから、殺すか殺されるかの日々だった。
人間の汚いところは嫌と言うほど見たし、妹とも殺し合った。
そして、長い間の封印だ。
本来なら、自由を謳歌したいと思うのだろうが、綾音はこの世界で特別やりたいことはない。
望まない封印が嫌だっただけで、女神として誰かを導くことも正直なことを言うとしたくなかった。
「はぁ。ゆるーりとしたスローラーフを千年くらい送りたいんだけど」
「それは無理でしょう」
「……なんで?」
「正体不明の襲撃者が女神様の御命を狙っています。その者たちを皆殺しにするまで、安息はないでしょう」
「……皆殺しって、まあ、でも、そうよねぇ。理由はさておき、殺しに来た相手を放置するのも私らしくないわね」
自分を女神と知り、また隠れていたのにも関わらず「メイ・リー・リーの部屋」というピンポイントを襲撃されたのだ。
現時点でも、いつ襲撃があってもおかしくない。
自分だけなら逃げに徹すればなんとかなるかもしれないが、メイ・リー・リーを守りながらだと厳しいだろう。
「女神様」
「その、女神様って言うのやめない?」
「しかし」
「あんたにまで女神扱いされても疲れるから、特別に綾音と呼んでいいわ」
綾音は知らぬ間にメイ・リー・リーに気心を許していた。
彼女は良くも悪くも明け透けだ。
綾音にとって初めての存在ゆえに、友人とは言わないが親しみを抱いてしまったのだ。
「……ありがとうございます、綾音。私のことはメイさんと呼んでいいですよ」
「うん、メイさんって、私にはさん付けさせんのかよ!?」
「冗談です、冗談。枢機卿ジョークです」
「どんな冗談よ。ったく、さてとメイ。力をつけてしっかり動けるようになるまで、とにかくここで英気を養いましょう」
「そして、スカイ王国ですね」
「だから変態王国にはいかねーって言ってんだろ!」
「いやー、麗しい女性の友情におじさん感動したよ」
「――っ」
「――なんですって!?」
綾音とメイだけしかいないはずの小屋の中に、男の声が響いた。
ふたりが飛び退くと、火にあたる中年男性がいた。
(こいつ……気配も何もない。殺さなかったのは気まぐれかしら。最悪の場合は、私の小屋ごと力押しで殺すしかないわね)
「まあまあ、落ち着きなって。俺は、あんたを迎えに来たんだぜ、女神様」
「なんですって?」
「俺の使命は、女神の保護。先走ったバカがいるようだから、俺も慌ててあんたを探したんだぜ」
「……まずは名乗りなさいよ」
「おっと、そりゃそうだな。失礼、失礼。俺は鳳凰院朱雀丸――Japanese ninjaだ!」
「……忍者ならもっと忍んだ名前にしなさいよ、馬鹿じゃない!?」
女の子がほっこりしている空間に謎の忍者とシリアス先輩の襲来!
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