50「祖母と挨拶です」②
ヘイゼルはサムたちを椅子に座らせると、用意してあった茶菓子を勧めた。
遠慮なくいただく。
マドレーヌやクッキーは、ヘイゼルが趣味で焼いていると聞いたことがある。
今日もそのようで、とてもおいしかった。
「美味しいです、おばあさま」
「ありがとう。嬉しいわ」
嬉しそうに微笑むヘイゼルは、メイドに任せることなく、自らお茶を淹れてくれる。
ありがたく頂戴し、談笑する。
「懐かしいわね。サムの周囲が賑やかなように、今のあなたくらいのクライドとロイグも周囲が賑やかだったのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。それはもう、やんちゃな時期でもあったもの。クライドとロイグに、ローガン・イグナーツ、ジョナサン・ウォーカー、デライト・シナトラ、ドミニク・キャサリン・ジョンストンたちはビンビン殿下と愉快な仲間たちと言われていたわ」
「――ついにおばあちゃんからもビンビンが飛び出てきちゃった!」
祖母だけは信じていたのに、とサムはショックを受けるが、ヘイゼルは気にした様子もなく懐かしむように語った。
「ふふふ。クライドは本当に寝ても覚めてビンビン言う子でした」
「ひどい子だな!」
ゾーイのツッコミにヘイゼルが「ええ、本当に」と頷く。
「女好きなのかと心配しましたが、昔からフランシスとコーデリアだけを見ていたので心配はしていなかったのです。むしろ、王宮の使用人や貴族の子女たちがビンビンと言うクライドならば、あわよくば――と、期待していたくらいでした」
「奴のビンビンも大概だな」
「クライドを心配した私は、ロイグに近くにいて諌めるように言ったのですが、良くも悪くも仲がいいこともありロイグもだんだんとクライドに似てしまいました」
「あれがふたりとか、変態だな」
「変態と言っていいのかわかりませんが、学園では楽しくやっていましたよ。モンスターと戦い、反乱分子の鎮圧、貴族との決闘など、毎月毎月よくもあれほど騒げるものかと今でも感心します」
「陛下は昔もちゃんと陛下だった件」
出会ったばかりのクライド・アイル・スカイは、控えめな王だったが、今のビンビン陛下とヘイゼルの過去語りは同一人物だとちゃんとわかる。
レプシーの負担がどれほど大きかったのだ、とツッコミを入れたいほどだ。
「クライドはフランシスとコーデリアと親しかったのですが、ロイグはイーディスとはお世辞にも良い関係とはいえず、私は心を痛めていたのです」
「母が?」
「ええ。イーディスはロイグとの結婚に前向きだったのですが、ロイグは公爵家と縁が深まることを良しとしなかったのですよ。ただ、ロイグがイーディスに気があることは周囲にバレバレでしたよ。ただ、年齢的なものがあるのでしょうか、素直になれずいつもツンケンしていました」
「なるほど、少し前のエリカや、エミリー姉様のようだな」
ウルは身近にツンデレがいたせいか、理解が早かった。
「ふふふ。エリカは少しロイグの昔の態度ににていますね。それでも、周囲からいれば、悪い関係ではなかったのでいずれ収まるところに収まるでしょうと思っていたのですが、ロイグは出奔し、あとはあなたたちの知るところです」
「……そうでしたか。俺はまだ父のことを知りません。もっと詳しくお聞きしてもいいですか?」
「もちろんですとも」
子供たちの若かりし時代を語ることにヘイゼルは快諾してくれた。
すると、ふと何かを気になったようにゾーイが口を開く。
「そういえば、ヘイゼル。私は直接誰かから聞いたことがないのだが、サムの祖父――クライド・アイル・スカイの父親はどうしているのだ?」
尋ねられたヘイゼルは、少し難しそうな顔をした。
サムも、そういえば祖父となる前王のことは聞いたことがなかったと思います。
「……そうね、いつかは知るでしょう」
ヘイゼルは何やら覚悟を決めたように頷くと、ゆっくりと告げた。
「現在、夫は……ばぶばぶしているわ」
「ばぶばぶ!?」
想像の斜め上をいく発言に、サムたちは揃って声を上げたのだった。
じーじ「ばぶばぶーっ」
最新コミック2巻が発売となりました! ぜひお読みいただけますと幸いです!
コミックウォーカー様、ニコニコ漫画様にて、コミカライズ最新話が公開されておりますのでぜひご覧になってください!




