44「カリアンと挨拶です」①
カリアン・ショーンは、大きく疲れた息を吐き出した。
「お疲れ様です、お父様」
娘マクナマラにワイングラスを差し出され、「ありがとうございます」とお礼を言って、手を伸ばした。
「まさか私たちがスカイ王国の新年パーティーに出席するとは思いませんでした」
「はははは。私も同感ですね。やはり、豊かな国は良い。城下町も賑やかで、国に活力があることがわかります」
娘の言葉に、カリアンは肩をすくめてしまった。
カリアンとマクナマラは、神聖ディザイア国で生まれ育った枢機卿と聖騎士だった。
運命のいたずらというべきか、生き別れた家族メラニーの息子が、国の敵として名が上がり、実際カリアンは孫サムと敵対していた。
孫息子が、スカイ王国の王子の息子であることも驚いたが、齢十五歳にして宮廷魔法使いになるほどの実力を持つことも信じられなかった。
さらに、魔王にも至ってしまったというのだから、カリアンが内心愕然としたのは言うまでもないだろう。
「私とマクナマラ、そしてモンド殿が揃ってスカイ王国に亡命するとは……数ヶ月前までは夢にも思っていませんでした」
「……私もラッキースケベ大魔王と婚約するとは夢にも思っていませんでした」
「ふふふ、確かに」
カリアンは女神信奉者であり古の人物アルフレッド・ポーンによって妻を奪われた過去があるため、人生のすべてを使って復讐を企んでいた。
その復讐は、果たされた。
カリアンはサムたちの勧めもあり、スカイ王国で生活をすることとなったのだ。
不幸中の幸いというべきか、アルフレッド・ポーンの悪事に加担こそしていたが、被害を最小限に済ませられるようにしていた。
その甲斐あって、カリアンを悪く思うものはいない。
アルフレッド・ポーンも水面下で動き続けたこともあって、その存在を知る者さえいないのがよかった。
蓋を開けてみれば、神聖ディザイア国と敵対関係になったが、孫息子がいるカリアンがサムを頼り亡命してきたくらいでしかない。
カリアンは亡命後、メラニーや孫娘のクラリス、義息子であるティーリング子爵と親しくし、一緒にも暮らした。
今はシャイト伯爵家に部屋をもらい、転居の準備をしている。
現在は、愛の女神エヴァンジェリン・アラヒーに仕える神父として働いている。
堅実なカリアンは良き相談相手として城下町の人たちや、貴族たちからも慕われている。
「ところで、友也くんはどうしている?」
「……奴なら先ほど、ご令嬢にラッキースケベってしまい退場となりました」
「まったく。あの体質はどうにかならないものか。彼に悪意がないだけに、不憫だ」
「思うのですが、サムがハーレムを築いているのですから、友也にもラッキースケベったら責任を取らせるべきではないかと悩んでいます」
「その場合、ありえないほどの規模のハーレムになるような気がするのですが」
確かに、とマクナマラが頷く。
ラッキースケベ始まる恋愛事情を経験したマクナマラだったが、「私は例外だな」と結論付けてワインを水のように一気に飲み干した。
「さて、サムもそろそろ貴族のお務めが終わったようですし、私たちも挨拶をさせていただきましょう」
「はい」
友也くん「マクナマラさんみたいな奥さんが増えたら僕壊れちゃう!」
近衛騎士さん「……なんか急に叫び出したんだけど、こわぁ。なんかこわぁ!」
真面目な話、オクタビアさんだからこそ友也くんを射止めたと言っても過言ではないです!
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