43「デール男爵と約束です」
「めっちゃわかるぞ!」
誰よりもデール男爵に共感したのはウルだった。
「わかってくださいますか!」
デール男爵はうっすら涙を浮かべてしまった。
「私は、その、さして歴史のある家に産まれたわけでもなく、うだつのあがらない三男でしたが、いろいろな事情があってデール男爵家の当主となったのです。そんな私を悪く言う貴族も多くいたのですが、クライド陛下をはじめ、イグナーツ公爵、グレン侯爵、ウォーカー伯爵、シナトラ伯爵にも大変お世話になりました。遠い田舎にいたのであまりご縁はありませんでしたが、本当に良くしていただいたのです」
そんなデール男爵は、クライドの変わりように絶句したらしい。
もちろん、尊敬する王の性格が反転していたとしても、デール男爵の忠誠が変わることはないのだが、なかなか声を掛け辛いのだ。
「まかせろ、デール男爵! なーに、サムと私が男爵領に向かえば、モンスターだろうと盗賊だろうと全部灰にしてやるよ」
「ありがたいお言葉! しかし、ウルリーケ様は、その」
「あー、見た目が幼くなったのは気にしなくていい。アンチエイジング、アンチエイジング!」
「なるほど。私めは魔法は使えませんが、きっとウルリーケ様ほどの魔法使いならば、そのようなことが……おや、はははは、そんなことは……ウルリーケ様が亡くなったとご連絡をいただき、ウォーカー伯爵にお手紙を書いた記憶が」
「気のせいだ! アンチエイジングだ!」
「そ、そうですか。実際、ウルリーケ様が目の前にいらっしゃいますので、きっと私の勘違いなのでしょう」
普段は「アンチエイジングなんてしていねえよ!」と叫んでいるウルだが、肉体が幼女になっていることを説明することが面倒臭いようで、こういう場で疑問を抱かれると「アンチエイジングだ!」と言うことにしているようだ。
ウルがかつて宮廷魔法使いであり、高明な魔法使いであったことはこの場にいる誰もが知っていることなので、デール男爵をはじめ、大半の者が信じてくれる。
――だが、信じてしまう人間がいるせいで『アンチエイジング』という魅惑な言葉に、貴族のご令嬢やご婦人が目を爛々と輝かせていることをウルは気づいていない。
きっと苦労するんだろうな、とサムは心の中で手を合わせた。
女性のこういう話に首を突っ込まない方がいいことは、ここ数ヶ月でよく学んだのでスルーに徹した。
「デール男爵、お話に割って入るようで申し訳ございませんが、わたくしからもよろしいでしょうか?」
「もちろんでございます、オフェーリア・ジュラ殿」
「ありがとうございます。モンスターに関しての詳細に関し、王都にいる間にぜひお話をさせていただきたいのですが、よろしいですか?」
「――っ、ありがとうございます! ぜひそうさせていただければ!」
オフェーリアがサムにウインクをしたので、デール男爵に手を差し伸べ握手を求めた。
「同じスカイ王国貴族として、お力をお貸すことを約束します。領地もお近くのようですので、今後良いお付き合いができると嬉しく思います」
「サミュエル・シャイト様」
「どうか、サムとお呼びください」
「ありがとうございます、サム殿。ああ、よかった。これで領民を安心させることができます! 本当に、ありがとうございます!」
瞳を潤ませるデール男爵は、サムの手をしっかり握り、深々と頭を下げたのだった。
領地の方も少しずつ、です!
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