42「女神は逃亡中です」③
「――残念ね。せめてモンスターでも現れれば、代わりにしたのに。でも、こんなクズどもがいなくなっても、誰も困らないわ。いいえ、むしろ称賛されるべきよ」
綾音が見つけた人間たちは、盗賊だった。
村というにはあまりにも簡素な集落で、風呂などまともに入ったことがなさそうな男たちが、酒を飲み、食料を食い漁っていた。
男たちの傍には陵辱された挙句絶命している女性が三名いる。
「なんだてめぇは……よく見りゃ、ガキだがいい面してるじゃねえか」
綾音は男を無視して、目を開けたまま絶命している女性の目に手を置き、閉じさせた。
「哀れな子たちね。でも、あなたたちの死は無駄にしないわ。私の糧になりなさい。代わりに、あなたたちを辱めた男たちを――ぐちゃぐちゃにしてあげるからっ!」
「ああ!? なにをボソボソ言ってやが、る?」
綾音に触れようとしていた男の腕が、あらぬ方向にひしゃげる。
男たちの声にならない絶叫が響くと同時に、女性に遺体が粒子となって綾音に吸い込まれた。
「せめてあなたたちが苦しみのない世界に旅立てることを祈るわ」
消えた女性たちに黙祷を捧げた綾音は、盗賊たちに向き直る。
「――お前らは苦しみの果てに死ね。私の糧になることができる以外、存在価値すらない汚れた存在が。非常時でなければ、お前たちのような屑が私の糧になれると思うなよっ!」
男たちを前に、唾を吐き捨てる綾音がゆっくり指を手に持ってくると、小さく囁いた。
「――――――」
男たちには理解できない言語だった。
次の瞬間、綾音に近づこうとしていた男五人の――すべての骨が捩れた。
歪み切った身体は悲鳴さえ上げることができず、しかし激痛が襲っている。死ぬこともできず、もう動けない。
自分になにが起きたのかさえ理解できず、のたうち回ることもできぬまま痛みに苦しむ。
死んでいないだけの肉塊となった仲間を目にし、愕然としながらも本能的に怯える残った男たちに、綾音は残酷に笑い、宣告した。
「お前たちが想像する痛み、絶望を思い浮かべなさい。――それ以上のものを与えてあげるわ」
盗賊たちの隠れ家にしていた集落に絶叫が響き渡る。
数分して、力を少し取り戻した綾音は、衣類と食料、少しの酒を持ってメイ・リー・リーが待つ小屋と走ったのだった。
補足:登場時から悪い面が目立った綾音さんですが、良い面も少なからず持っているということを知っていて欲しいと思う、回でした。
彼女が今後どうなっていくのかは、作中で見守っていただけたら幸いです。
次回からサムサイドをお届けします。
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