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39「新年のご挨拶です」②





 新年の挨拶こそ、クライドらしいものではあったが、その後のパーティーは問題なく進んでいった。


(適当に飲み食いしていればいいやと思っていたんだけど……うへぇ)


 現在、サムの前には、貴族たちが集まっている。

 単純に挨拶をしようとする者から、下心を隠せない貴族までいる。


 顔見知りの貴族には挨拶をし終えてところに、待っていましたと言わんばかりに現れたのだ。

 いつものサムなら、簡単に挨拶をして終わりなのだが、今日はそうはいかなかった。


 シャイト伯爵領に近しい貴族もいれば、サムの領地と良い関係を築きたいと願ってくれる者もいる。

 中には、サムとそばにいるのがウル、ゾーイ、オフェーリアと幼く見えるせいか、強気な物言いをする貴族もいた。


 そこまでならば良い。

 結局のところ、オフェーリアがうまく対処してくれているのだ。

 ジュラ公爵家令嬢であると同時に、領地運営をはじめとした英才教育を受け、社交界にも顔を出しているオフェーリアの存在感は強かった。


 サムは笑っていればいいし、無茶を言う人間にはウルと一緒に威圧を込めた笑みを浮かべてやればそそくさと退散していくので問題はない。

 近隣の領地の貴族とも挨拶をしっかりできたので、あとは今後の付き合い次第だろう。


 ここまではいいのだが、サムを困らせるのは、


「――シャイト伯爵のお力をお貸しできないでしょうか?」


 取り入ろうではなく、利用しようでもなく、本当に困っているから力を貸してほしいと願ってくる者だった。

 他者にドライであるサムだが、困っている人間を一蹴できるような性格ではない。

 ある意味、サムにとっての弱点である。


 サムに助けを求めたのは、デール男爵だった。

 シャイト伯爵領から北に少し進んだ小さな領地の持ち主だ。

 そんなデール男爵領では、モンスターが異常発生しているようだ。


 冒険者を雇い、騎士団の派遣を要請し、なんとか冬前に戦いを終えたが、それでも多くのモンスターが残っているという。

 冬になり、雪が降ったことで、モンスターの動きも悪くなっているようで、今はなんとか身体を休めることができるそうだ。

 しかし、春に近づけばモンスターが活気付くだろう。

 デール男爵としては、冬の内に間引けるモンスターを間引いておきたいようだが、いい加減戦力が足りないという。


 冒険者は在中してくれているが、騎士団はそうはいかず、すでに王都に戻っている。

 デール男爵は宮廷魔法使いの派遣を求めようとしたのだが、つまりそれは陛下に宮廷魔法使いを動かしてもらうよう願うのだ。


 しかし、古い慣わしというのか、王家と縁もゆかりもない男爵家がおいそれと頼めるはずもなく、派閥に属する子爵、伯爵家に頼むも、伝言ゲームになっているため結局は届かない。

 あろうことか、他の貴族も小さな男爵家の領地など気にしていないのが現状だった。


 王都の貴族も面倒臭いが、辺境貴族たちもそれなりに面倒ごとがあるらしい。

 そこで、デール男爵は新年のパーティーに出席することを好機と考えたらしい。


「……大変不敬ではあると承知ですが、一年ぶりに王都を訪れると陛下はすっかりお代わりになられているようで、その、どうお声をかけていいのか分からず。そこで、シャイト伯爵に無礼を承知でお声がけさせていただいたのです」

「あー」


 デール男爵はクライドのビンビンを初めて知ったようで、領地の危機であるのはもちろんだが、それ以上に動揺が勝ってしまい、どうしていいのか分からず挨拶をしながらサムに頼ろうとしたのだった。


(これは仕方がないかな、うん!)






 デール男爵「一年ぶりに陛下に拝謁したら賢王がビン王だった件」


 最新コミック2巻が発売となりました! ぜひお読みいただけますと幸いです!

 コミックウォーカー様、ニコニコ漫画様にて、コミカライズ最新話が公開されておりますのでぜひご覧になってください!

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