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38「新年のご挨拶です」①






 サミュエル・シャイトは、宮廷魔法使いとして、シャイト伯爵として、王宮の新年パーティーに参加していた。

 サムと一緒に会場入りしたのは、ウルリーケ・ウォーカー・ファレル、オフェーリア・ジュラ、ゾーイ・ストックェルの三人だ。

 リーゼをはじめとした妻たちは、妊婦のため、人の多い会場を避けている。

 万が一を考えたくはないが、何かあったらと不安になるため、ウォーカー伯爵家にいる。


 ウォーカー伯爵家では、魔王白雪、ダグラス、寝てしまったがフランベルジュ、元魔王レプシーがいる。他にも準魔王や魔族がいるので、王宮よりも戦力は揃っている。

 まず、大ごとになることはないだろう。


 他に会場入りしているのは、魔王遠藤友也と婚約者マクナマラ・ショーン。愛の女神エヴァンジェリン・アラヒーと聖女霧島薫子。神聖ディザイア国元枢機卿カリアン・ショーンとモンド・ムンドといった面々だ。

 もちろん、ギュンター・イグナーツとクリー・イグナーツ夫妻も会場入りしている。


「……それにしても、この国の貴族は俺のことを勘違いしている気がするんですが」


 宮廷魔法使いに許された青い戦闘衣を身につけたサムは、顔を引き攣らせていた。

 それもそのはず、サムを見つけて挨拶する貴族たちが口々に「ぜひ我が娘を」「我が息子を」「孫娘をぜひ」「いやいや孫息子を」と言うのだ。


「まあ、なんだ。さすがに私も息子を嫁にとか言ってきた貴族は頭おかしいんじゃねえかって思うな。あのおっさんも数年前はごりごりに嫌な貴族だったんだけど、なんで朗らかな下ネタ大好きなおっさんになってるんだよ。数年で、マジで何があったんだよ、この国」

「ウルお姉様。正確に言うならば、数年ではなく、サム様が現れてから数ヶ月です」

「サム……お前の影響力は壮大だな。正直、感心している」


 ウル、オフェーリア、ゾーイが、次々に好き勝手なことを言ってくれる。

 この場が王宮の会場でなければ号泣しているところだ。

 挙げ句の果てには、サムたちを一箇所に集めておくと絶対にやらかすから、という根拠のない理由で、ギュンター夫妻、祖父たち、友也たちと一定の距離を取らされている。

 絶対に一緒にいたいと言うわけではないが、あまりも無体な扱いだ。

 もちろん、ギュンターが騒ごうとしたのだが、クリーがこっそり「雪の中でもいいですわね」と呟くと静かになった。サムには彼女が雪の中で何をしようとしたのかは知らないし、知りたくない。ちなみに、現在は吹雪いている。


「よう、絶好調だな」

「ごきげんよう、サム、ウル、オフェーリア、ゾーイ様」


 青い戦闘衣を身につけたデライト・シナトラが、青いドレスで着飾ったレイチェル・アイル・スカイを伴い現れた。


 サムは胸に手を当てお辞儀をし、ウルたちはドレスのスカートを軽く掴んで会釈した。


「ま、堅苦しい挨拶はなしってことでな」

「そうですわ。サム……わたくしはあなたのお義母なのですから!」

「あ、はい」

「ウル、オフェーリア、ゾーイ殿、あなたたちもわたくしのことをママと呼んでもいいのですよ!」


(絶好調はあんたの嫁だろ! って、突っ込んだらきっと空気読めない子になるから我慢。がーまーん!)


 ウルは顔を引き攣らせ、オフェーリアは嘆息し、ゾーイは「はいはい」と流しているので、サムはなんとか堪えることができた。

 少し離れた場所には、第一王子セドリックと第二王子エミルもおり、サムと目が会うと手を振ってくれた。

 エミルは誰かを探しているように血走った目でサムの周囲を伺っているが、ここにメルシーは来ていない。


「ま、なんだ。今年もよろしく頼むぜ。昨年はいろいろありすぎた愉快な年だったからな、今年はゆっくりできると……いいなぁ」

「本当ですねぇ」


 サムとデライトが顔を見合わせて、大きくため息をついた。

 きっとふたりとも、ゆっくりできるはずがないとわかっているのだ。


 そうしていると、給仕がワインの入ったグラスを配り出した。

 国王が入ってきて乾杯の流れだ。

 サムたちは姿勢を正し、陛下の登場を待つ。



「――クライド・アイル・スカイ国王陛下様のご登場です」



 声と共に扉が開かれると、広間に王冠を身につけ正装をしたクライド・アイル・スカイが、第一王妃フランシス・アイル・スカイと第二王妃コーデリア・アイル・スカイと共に入ってくる。

 三人は王と王妃のために用意された席の後に立つと、用意されていたワインを手に取った。



「皆の者、寒い中よく集まってくれた。こうして新たな年を無事に迎えることができたのも、そなたたちと民たちのおかげである。本日はささやかながらもてなしをしたい。普段、王都に来ることのできない友と語り合おうではないか。この国も未来はそなたたちにかかっている。共に、良き国にしよう!」


 ワイングラスを高々と掲げ、クライドは乾杯の音頭を取った。





「――スカイ王国にビンビンあれ!」






(やっぱり言いやがったぁああああああああああああああああああああ!)


 途中まではいい話だったのに、と思ったサムだったが、貴族の九割が同じく声高々に乾杯した。


「スカイ王国にビンビンあれ!」

「お前たちも言うのかよ! ノリノリだな! あんたら!」






 後に「賢王クライド・アイル・スカイは一年はビンビンにはじまりビンビンに終わる」という名言を残したとか。


 最新コミック2巻が発売となりました! ぜひお読みいただけますと幸いです!

 コミックウォーカー様、ニコニコ漫画様にて、コミカライズ最新話が公開されておりますのでぜひご覧になってください!

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