37「新年を迎えます」③
簡単な食事と酒を口にしながら、それぞれ談笑している間に――新年は訪れた。
ウォーカー伯爵家当主であるジョナサン、そして伯爵夫人のグレイスにまず挨拶をした。
続けて、妻リーゼ、アリシア、ステラ、フラン、水樹、花蓮と挨拶を交わし、婚約者のウル、ゾーイ、オフェーリアとも挨拶をする。
いつもならここにデライトたちがいるはずなのだが、彼は王女レイチェルを娶った立場であるため、王宮に挨拶に行っている。
サムもステラと共に行くべきなのだろうが、他ならぬクライドとフランシスから、王宮のパーティーで挨拶をするから気にしないでいいと言ってもらっている。
レイチェルの母コーデリアは、挨拶や礼儀に厳しい方であるため、デライトもウォーカー伯爵家に年末最後の日に顔を出してから王宮に向かっている。
「なんやかんやと新年か」
異世界には「明けましておめでとうございます」と言う習慣がないので、ちょっと寂しく思っていると、友也と薫子がワインを片手に現れた。
「明けましておめでとうございます、サム。本年もよろしくお願いします」
「サムくん。明けましておめでとうございます」
「友也、薫子さん、明けましておめでとうございます。うわー、やっぱり年明けには言いたいよね」
地球組が笑い合い、乾杯した。
そして、笑う。
「僕がこちらに来たばかりの頃、明けましておめでとうと言っても、おう、としか返してもらえなかったことを思い出します。新しい年を迎えるのはいいことなんですが、めでたい、祝おうって感じははないみたいで」
「こちらだと建国や王様の誕生日とかだもんね」
「……最近ではサムの生誕祭が大々的に祝われましたけどね」
「お前なぁ、よくあの黒歴史を自分から口にできるなぁ」
「そうでした! 一定数、友子ちゃんファンが次はいつ女体化するのかと尋ねられれることもあり、怖かったのを思い出しましたよ!」
「それって忘れたら駄目なんじゃないの?」
「ですよね」
ワインを飲みながら、みんなを見渡すとそれぞれ談笑をしている。
いつの間にか現れたダグラス、寝てばかりいるフランベルジュも会場にいて、レプシーと白雪、エヴァンジェリン、ロボと懐かしむような会話をしている。気づけば魔王が勢揃いだ。
ダフネとデリックは、準魔王のゾーイ、カル、父ダグラスと一緒にやってきたジェーンと笑顔を浮かべて話をしていた。
ダフネが準魔王であることは知っているのだが、デリックが準魔王と親しげに話をしているのは不思議な光景だった。
ちなみに、ダニエルズ兄妹はクラリスを守るために、ティーリング子爵家と行動を共にしている。
実力は折り紙付きなので、頼もしくある。
ジョナサンとミシャはワインを飲みながら談笑しており、口を開けばウルの逸話を語っている。時々、揃って腹部を押さえているようにも見えた。
リーゼとウルは、女性陣で盛り上がっている。
編み物や、今後生まれてくるであろう子供の話をしている。
ギュンターはエリカと一緒にヴァルザードたち兄妹と共におり、甲斐甲斐しく世話をしていた。
カリアンとマクナマラは、モンドとオクタビアと共に何やら話をしている。オクタビアが積極的にモンドに身体を押し付け、彼が少し照れた様子なことを微笑ましく思った。
竜王はマイペースで酒を飲み、青樹はなにか話をしたいが声をかけられないとレプシーをちらちらみている。
青牙はどこをどういう話でそうなったのかは不明だが、ジョンストン家にお呼ばれてしている。
メルシーをはじめとした竜一家は、お風呂でのんびりしているので、この場にはいない。
子竜三姉妹も挨拶するために現れてくれたが、すぐに寒さに負けてお風呂場に戻って行った。
「久しぶりに、のんびりした日になりそうな予感」
「サムくん。口に出すとフラグに聞こえちゃうよ?」
「仮にも、正午から夜にかけて王宮でパーティーですからね。控えめに言って、ビンビンパーティーでしょうね」
「……考えないようにしていたのに」
あと数時間で、王宮入りだ。
普段は顔を合わせない貴族も来るため、サムは内心、新たな変態が増えるのではないかと恐れていた。
仮に、新たな変態が現れずとも、クライド・アイル・スカイがはっちゃけることは想像に容易かった。
次回は王宮です!
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