53「デビューです」③
「紹介しましょう! ミシャ・ファレル殿ですわ!」
「……ど、どうも、ミシャ・ファレルです。本日から、魔法少女マジカルエメラルドとしてスカイ王国の愛と平和と希望のために頑張ります」
おおっ、とざわめきが上がったあと、溢れんばかりの拍手が響く。
「え? 歓迎なの?」
当のミシャは、受け入れられたことに驚いているが、サムたちにしたら、筋骨隆々の中年男性よりも、可愛らしい女性にしか見えないミシャが魔法少女のほうがまだ受け入れられる。
むしろ、「アリ」である。
貴族の中には「――はうっ、この胸のときめきは……まさか、恋?」などとほざいえいる者もいるのだ。さすがスカイ王国貴族だ。
「……知ってるか、サム。お父様は、下着まで女性のものを身につけているんだぞ」
「……なにその情報。いらないんですけど」
「……母上がちゃんと選んだ」
「……それもいかがかと」
「……なんだかんだまんざらじゃない様子で父上が履いている姿を見てしまった、ウルリーケちゃん十三歳」
「……グレちゃダメだよ」
父親を直視できず、ウルは肩を落とす。
サムは彼女の肩を慰めるように、ぽんと叩いた。
「それにしても、隣にキャサリンさんがいるせいか……ミシャさんがまともな魔法少女に見える。いや、全然魔法じゃないし、少女じゃないし、三児の父だしってツッコミどころたくさんなんだけどさ! キャサリンさんのインパクトがえぐいのよ!」
架空の存在とはいえ魔法少女がいた世界から来たサムにとって、キャサリンを魔法少女であると受け入れることは難しかった。
だからといって、ミシャを受け入れられるかどうかは別である。
「ふふふっ。じ・つ・は・ね! 今日はミシャちゃんだけじゃないの!」
「……え?」
「まだ、魔法少女になる奴がいるのか? 世も末だな」
キャサリンの衝撃発言に、サムはこの場にいないのは誰か探す。
一番、魔法少女になりそうな夫婦はキャサリンを見向きもせずデザートを食べているので、まずないだろう。
ちょっとだけ安心した。
「――さあ、おいでなさい! ミシャ・ファレルの息子、レスリー・ファレルよ!」
「はぁああああああああああああああああああああああ!?」
ウルが叫ぶと同時に、ファレル家の長男であり、ウルの兄でもあるレスリーが紫色の魔法少女の衣装を身につけてノリノリで会場入りすると、横ピースをした。
拍手が響く。
「そういえばレスリーお兄ちゃんもミシャパパと一緒に魔法少女の書類にサインしていたっけなぁ」
「……あれが我が兄とは情けない。というか恥ずかしい」
「でもほら、ノリノリに見えるけど、実は恥ずかしいんでしょ。顔赤くしてプルプル震えているよ」
「知るか! というか、我が家のクソ兄貴もミシャお父様の息子だけあってちゃんと取り繕うをそれなりなんだなぁ。地元じゃ、バカでスケベで有名だったのに」
「スカイ王国で自分を開花させたんだね」
「……妹的にはしてほしくなかったわ!」
会場からの評判は悪くない。
むしろ、「あり」だと拍手が止まらない。
「私がスカイ王国にいるときはさ、強硬派とのギスギスしたやりとりがあったりしたんだけど」
「ウル……ウルの知るスカイ王国は死んだよ」
「本当に何があったんだよ。もしかして、ギュンターの奴が連れてくる世界間違えてないよな!?」
「残念だけど、この世界がウルの素敵な故郷なんです」
サムがどこか諦めた声を出すと、ウルはがくりと項垂れた。
エミリー「うわぁ、レスリーきもっ! もじもじしているのが余計にきもっ!」
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