51「デビューです」①
スカイ王国王宮の広間に、サムたちは来ていた。
「しっかし、まさか魔法少女のお披露目を王宮でするとは……たまげたなぁ」
ちょっとしたパーティーが行われ、見知った面々から、関わりのない貴族まで幅広く来ていた。
おそらく商人であろう人間もいる。
「……たまげたのはこっちだ。まさかミシャお父様が魔法使いデビューとは……私、笑えているか?」
「ウル……滅茶苦茶引き攣った顔をしているよ」
「……だよな」
燃えるような赤いドレスを身に纏い、髪をアップに纏めているウルがサムの隣に並ぶ。
今日はいつもより寒いので、妊娠中のリーゼたちは屋敷でお留守番だ。
会場もギュンターが登場し、指をひとつ鳴らせば寒さなど感じないが、最近リーゼたちを見ると、娘息子孫との婚約を――などと言う人間が多いため、彼女たちは辟易していた。
ウルの父親ミシャの晴れ舞台なのでパーティーに参加したいと思っていたようだが、妊婦にストレスは良くないということで、本日のサムのパートナーはウルが務めている。
もちろんサムにも、子供の婚約者に早々と名乗り出る者たちがいるのだが、ウルがいてくれればひと睨みだろう。
「サム……そしてウルリーケ、久しいな」
「これは、グレン侯爵。ご無沙汰しています」
サムにとって祖母の実家であるグレン侯爵が声をかけてくれたので、手に胸を当ててお辞儀をする。
対してウルは見知った顔に、軽く手を上げた。
「よう、久しぶりだな」
「……君は生まれ変わっても相変わらずのようで安心したよ」
「私は私だからな。というか、お前も数年で立派になったな。聞いたぞ、子供もいるんだってな。見合いから逃げ出していた十代が懐かしいよ」
「……私も内面はあまり変わっていないが、外面を取り繕うことくらいは覚えたよ。そうでもしないと侯爵家の当主など務まらないはず……だったのだが、たった一年で愉快な国になったものだよ」
グレン侯爵は複雑な顔をしていた。
まだレプシー・ダニエルズが王宮の地下に封印されていた時代は、クライドを始め歴代の国王たちは魔王を封じ続けるために、力を、精神を削いでいた。
そのため、少々政治が疎かになっていた面はあるが、有能な部下たちが支えていた。ジャスパー・グレンも王を支えるひとりだった。
だが、サムによってレプシーが倒されると、その反動でクライド・アイル・スカイのネジが外れた。いや、外れていたネジが元に戻ったと言うべきだろうか。
ビンビン街道を突き進みながら、敵対勢力をサクサクと処理していくクライドに、貴族の大半が壊れたのか、優れているのかわからず困惑したのは言うまでもない。
しかし、さすがスカイ国民。大半がすぐに慣れた。
そんな大半から外れているのが、グレン侯爵だった。
「――とはいえ、恐ろしい魔王を国に抱えているよりはマシだと思っていたが、今ではすっかり魔王殿が集まる国になってしまった。これがいいことか悪いことかは、私にはわからないので後世の人間に判断を託そう」
「あはははは……ですね」
後世の人間がどんな反応をするのか恐ろしいので、サムは考えないことにした。
きっとギュンター・イグナーツとクライド・アイル・スカイの名前が刻まれ、尾ひれがついてとんでもないことになるのだろう。
「ところで、サム」
「はい」
「よければ、パーティーのあとで個人的に話があるのだが、構わないだろうか?」
「ええ、もちろんです」
「おい、私は抜きか?」
「話の邪魔をしないというのなら、同席を許可しよう」
「……随分と偉くなったものだな。よし、お前の恥ずかしい話を家族に」
「ウルリーケ殿、ぜひ同席していただきたい」
「最初からそう言えばいいんだよ」
貴族としての威厳を一瞬で捨てて丁寧に腰を折ったグレン侯爵は、一体どんな弱みをウルに握られているのだろうかと気になってしまう。
そんな時、会場の扉が開かれた。
「宮廷魔法少女キャサリン・ジョンストン様のご入場です!」
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