50「ついにこの時がきました」
「まあ、ぎゅん太郎のことは置いておくとして、とりあえずそろそろ時間だから行くぞ」
「ま、待ちたまえサム! 僕の子供がとんでもない名前になりそうな気がするんだが! いくら僕の名前が素敵であやかりたいのはわかるが、さすがにそれはちょっとと思ってしまう常識人の僕がいる!」
「はいはいそうだねー」
「ちゃんと聞いて!?」
ギュンターを無視して上着を羽織ると、クリーが立ち上がりギュンターの上着を準備した。
クリーはギュンターの世話をメイドに任せることをよしとしないようで、身重な現在も甲斐甲斐しく世話を焼いている。
もともとギュンターは、自分のできることは自分でしてしまう。お茶などはメイドに入れてもらうが、着替えくらいは当たり前に行う。
サムやウォーカー伯爵家の人間も同様だ。
そんなところまで世話を焼いてもらう必要はないと思っているし、自分で着替えたほうが早いと思っているが、貴族の中には自分でできることこそ使用人にやらせる人間もいる。
それの良し悪しを問うつもりはないが、クリーが甲斐甲斐しくギュンターの世話をしている姿にほっこりしてしまう。
サムがリーゼたちの手助けをしたいように、彼女たちが自分の世話をしたくなるのもと、きっとギュンターとクリーのように想いあっているからだろう。
「し、しかし、サム? 何か用事があるようだが、なにかな? 僕はクリーママと我が子の名前について話し合いをしなければならないと思うのだが」
「あとでゆっくりお話ししなさい」
「そ、そんな」
「というか、今回はお前が関わっているんだから、ちゃんと参加しないとダメでしょうに」
「……僕が関わっている? 一体、何が起きるのかな?」
「――魔法少女デビューだ」
「――え?」
サムの言葉にギュンターが目を丸くした。
いつもと立場が逆だが、仕方がない。
「ウルとお父様であるミシャパパが魔法少女デビューすることが決まったんだよ! 今日はお披露目だから、ほら、行くぞ」
「待ちたまえ、いろいろ待ちたまえ! クリーママは知っていたな? いそいそと自分の準備もしているではないか!」
「ええ、知っていましたが?」
「僕は何も知らなかったんだが!? 親愛なるウルリーケのパパが魔法少女デビューするのは素晴らしいことだが、なぜそれに僕が関わっていると? 言っておくが、常識人であるギュンギュンにとって魔法少女は理解の範疇を超えた存在なのだが」
「どこの誰が常識人だ! そもそも! お前が別世界から連れてきたミシャパパがスカイ王国で魔法少女デビューする記念すべき日なんだから、ちゃんとウルにぶん殴られろ!」
「まさかの殴られ役かな!? 重ねて言うが、僕はミシャ殿に魔法少女になるよう強いたことはないからね! むしろお仕事を斡旋するつもりだったのに、キャサリン殿がもっこり現れたせいで……だというのに僕を責めるのかい!?」
「……お前を連れてこないと俺が殴られる」
「やっぱり! ひどいよ、サム! てっきりデートのお誘いだと思って孕む準備をしていたのに! まさかの暴力ルートなんて!」
「しーりーまーせーん! じゃあ、クリーよろしく!」
「かしこまりました!」
元気よく返事をしたクリーは、目にも留まらぬ速さでギュンターに手枷足枷をはめて猿轡と目隠しをした。
あまりにもの速さであり、サムの反射神経を持ってしても目視できなかった。
クリーの潜在能力に戦慄しているサムに、彼女は「いい仕事をしましたわ」と頷き、ギュンターの尻を景気良く叩いた。
「ふぐぅ」
「あ、つい。いつもの癖で。わたくしったらはしたない。サム様、失礼いたしました」
「あ、うん」
ものすごいものもを見てしまったサムは、考えることをやめた。
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